インビジブル(2000) : 映画評論・批評
2000年10月15日更新
2000年10月14日より日比谷映画ほか全国東宝洋画系にてロードショー
ケビン・ベーコンのハマリ役、極悪透明人間
三つ子の魂百までのバーホーベンのエロ魂と、スクリーンに姿が映らないという俳優にとってはフクザツな気分の役柄に挑戦したケビン・ベーコンの役者魂。内蔵や血管が浮き出す最先端映像の有り難みがわからないフツーの映画ファンでも、この2つの魂だけで燃えまくり。なにしろ透明化した天才科学者が、エロいイタズラや覗きやレイプに走るのだ。思わず苦笑するほどの志の低さだけど、SEXと暴力こそ、人間のベイシック・インスティンクトだと認め、スリラーに仕立てあげるバーホーベンはやっぱりグレイト。
クライマックスの死闘が研究所内だけなので小粒な印象は否めないが、その不満も、高慢な自信家ぶりを体現するベーコンがスクリーンに充満させる空気で帳消し。今回初めて彼のセクシーに気づいた女性が続出しているのも、ベーコンが「世界と性的に関わっている人間」と分析するセバスチャンの内面がスクリーンに映し出されて いるからでは? 実験の苦痛に七転八倒する彼のオールヌードもポイント高いけれど、顔が映らないぶん声が大きなウエイトを占めるこの作品。声が危険にセクシーなベーコンを選んだ時点で、女心を怪しくときめかすのは約束されていたのだった。
(杉谷伸子)