劇場公開日 2003年8月16日

HERO(2002) : 映画評論・批評

2003年8月15日更新

2003年8月16日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にてロードショー

監督の美学と今日的テーマが全編を貫く

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中国の戦国時代、やがて天下を統一して始皇帝を名乗る秦の国王の前に、ひとりの男が現れる。王の命を狙う3人の刺客を倒し、その報酬を受けに参上した彼は、王に請われるまま、事の次第を語り聞かせる。聞き終わった王はしかし、刺客のひとりと実際に剣を交えた経験から、その話の嘘を見破る。そこで語り直される事の真相にもまた裏があり、3度目の正直ともいうべく、ついに誠の真実が明かされていく……。

こんな重層的かつ緊密は文学的構造をもった「HERO」ではあるが、それでもチャンバラが魅力の武侠映画の快感も決して遺漏することなく、武術指導の巨星チン・シウトンは、見たこともない華麗な剣戟シーンを展開させ、さらに監督チャン・イーモウの美学が貫徹されているから、まるで一幅の名画を見せられるようで、それだけで酔いしれてしまう次第。その美学が、語られるたびに反転する物語の色調の変化にも絡む徹底ぶり。また、主演の明星たちの魅惑はいうまでもなく、これぞ映画の醍醐味があり、そのうえ、「身捨つるほどの祖国はありや」と問い返されるほどの今日的テーマが貫かれ、静謐でありながら、熱き血潮燃える骨太の作品。

高橋良平

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