1972年6月のリバイバル公開時に、テアトル東京のシネラマ・スクリーンの巨大画面で鑑賞した思い出のある映画。
『大脱走』以来、大好きだったジェームズ・ガーナー氏の主演という事で是非観たいと思った作品だったので、父にせがんで当時は珍しかった全席指定のテアトル東京で前売り券を買ってきてもらって観る事が叶った作品。
子供心に、初体験のシネラマのその圧倒的な迫力に度肝を抜かれた。
当時のMGM映画の誇る70mm巨編、それも国際的各国スター総出演という趣向の、シネラマ・シアターでの上映を前提に撮影が行われた“超大作”映画の一本なのである。
まさに”眼前に迫る”フォーミュラー・マシンのタイヤは、驚異的な迫力であり、シネラマ・シアターの超立体音響(当時は70mmフィルムのアナログ磁気トラック6chなどをそう呼んでいた)の臨場感は未体験ゾーンというに相応しかった。
このような映画体験をしてしまい、以降これが基準値みたいになってしまうと、その後並大抵な映画、通常の劇場では中々満足出来なくなってしまうという、罪深さも思い知る事となった。
この映画により、その後に繋がるいろいろな事や人を知った。
監督のジョン・フランケンハイマー
音楽のモーリス・ジャール
出演のイヴ・モンタン、三船敏郎、エヴァ・マリー・セイント、アドルフォ・チェリ、アントニオ・サバトと、そしてその恋人役のフランソワーズ・アルディ....
同様に子供心に、フランソワーズ・アルディのその端正な美しさというか、その姿がとても印象深かった。
極端に着飾ったり、印象の強い個性的な化粧だったりするわけでも無い、まるで普段着のような(当然違うが)シンプルなスタイルの、それでいてあの綺麗なおねえさんぶり。
それほど出演時間が長いわけでもなかったにも関わらずとても気になった。
映画を観ていて、出演の女優さんに興味を持ったのはこの時が初めてだったかも知れない。
そしてその後それ以降に、他にはそれ程気になったりするような事って無かったと思える。
もちろん、この映画で初めてその存在を知り、パンフレットで名前や、フランス人であることなどを知っることが出来たわけである。
今のように情報源が容易く得られる時代では無いので、それが唯一無二となった。
(随分後になって、日本でちょっとしたブームっぽい現象が起こったが、その時は歌の方で。)
1944年1月生まれなので、私などよりもひとまわり以上は歳が上なわけだが、1966年制作の作品だから当時若干22歳という若さだったわけである。
登場する俳優(特に女優)の顔ぶれの中でも極めて若く、身近に感じたという事もあったかも知れない。
1972年6月のリバイバル公開時点では、それでもまだ28歳という事になる....
それがほんのつい先日、2024年6月11日に亡くなったという情報が伝ってきた、本年で丁度80歳を迎えられたところだった事になる。
日本の主だったメディアは、ネットのニュースも含め、殆ど取り上げていなかったように思えた。
自分の中の何かが、また一つ終わりを告げたように思えた。
さようならフランソワーズ、永遠の綺麗なおねえさん.....
追記
因みに、この映画の音楽担当モーリス・ジャール氏もまたフランス人であり、ヨーロッパ的なテイストにボサノバも取り入れたサウンドも洒落ていて、人生の中のごく初期に買った豪華ジャケットの国内盤サウンド・トラックLPの一枚で、とても愛聴したものだった。