GOAL! : インタビュー
リバプールの熱烈なサポーターであるプロデューサーのマイク・ジェフリーズは、取材日の早朝、愛するリバプールがFAカップに優勝し、「カモーン」と上機嫌。『GOAL!』3部作誕生の秘密を語ってくれた。(聞き手:佐藤睦雄)
マイク・ジェフリーズ(プロデューサー) インタビュー
「主人公が夢を追う半生は、フロドが指輪を手にして旅に出るのと同じさ」
──レッズ(リバプールの愛称)ファンですか? FAカップ優勝おめでとうございます。
「われらがスティーブン・ジェラードは決めるときに決める男だ(ロスタイムに決勝点をあげた)。今日の朝は久しぶりにおいしいビールを飲んだよ」
──サンティアゴには本当は愛するリバプールに入団してほしかったのではないですか?
「そりゃ、レッズに入ってほしかったよ。でも、リバプールはこの企画にぜんぜん乗ってこなかったんだ。反対に、ニューカッスル・ユナイテッドは大乗り気。レッズファンは、ライバルであるマンチェスター・ユナイテッドやチェルシーとの選手の移籍を認めないほどだからね。この2チームじゃなければどこでもよかったんだ。ニューカッスルに対しては嫌悪感がないからね(笑)」
──「GOAL!」3部作であなたは脚本も書いていますね。こうした本格的サッカー映画を作ろうと思ったきっかけは?
「実は02年のワールドカップを見るためにビジネスパートナー(マット・バレディ)と日本にやって来て、静岡での準々決勝イングランド対ブラジルを見た。ロナウジーニョに決勝点を決められて1対2で負けてね。ホテルへ帰ってヤケ酒(日本酒やビール)を飲んだんだよ。二日酔いのまま次の朝、東京をうろうろしていたら、各国のユニフォームを着た人々であふれ、街中がワールドカップで沸いていてね。落ち込んでいたのは、われらイングランドファンだけだった(笑)。それで気がついたんだな。ワールドカップというのは全世界の人々をひとつにまとめるってね。人種や宗教や文化も関係なく、サッカーを単純に楽しんでいる。思えば、競馬なら『シービスケット』、ボクシングなら『ロッキー』、野球なら『フィールド・オブ・ドリームス』がある。ところが、サッカーの素晴らしさやスタジアムの熱狂を伝える本格的なサッカー映画がないな、と気づいた。それで、すぐにホテルを引き払って、二日酔いのままロサンゼルス行きの飛行機に飛び乗った。一気にこの『GOAL!』の脚本を書き上げたんだ」
──過去にろくなサッカー映画はないですもんね。
「興奮できるのは、ペレが出た『勝利への脱出』ぐらいかな。だが、あれも“現代”を描いているわけじゃなくて、第2次大戦が舞台だった。“今”のプレミアリーグの熱狂を伝えるサッカー映画はないものね」
──ニック・ホーンビィ原作の「ぼくのプレミア・ライフ」や「シーズン・チケット」のように、ファン気質というかフットボールをモチーフとした映画ばかりですもんね。
「『ぼくのプレミア・ライフ』ってリバプールが負けたゲームについてくどくどいってる映画か。きみはぼくのキズ口をほじくるのが好きらしい(笑)。冗談はともかく、純粋にサッカーのプレイを見せてくれる映画がなかったのが実状だった。でも、この映画をぼくは純然たるサッカー映画とはとらえていないんだ。主人公の夢を追う半生を描いている。それは、『ロード・オブ・ザ・リング』のフロドが指輪を手にして旅に出るのと同じようなものだよね」
──3部作というも同じです。
「これはサッカーをモチーフとしているけれど、あらゆる障害が彼を待ち受ける。フロドと一緒さ。ビー玉を転がしたり、バナナの皮を置いたりして、彼を転ばせようとするやつまで登場する。この『GOAL!』の主人公はアメリカへ不法入国しているから、いったん帰国すると、もう2度と夢を追うことができなくなる。そうしたしがらみを体験しながらも、夢を達成しようとする姿が感動させるんだね。現に、試写のあとアンケートをよると女性のほうが感動が大きかったりする。必ずしもサッカーファンでなければ楽しめない映画ではないと思うよ」