フレディVSジェイソン : 特集
「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」といえば、真っ先に思い浮かべるのが、ホッケーマスクの殺人鬼ジェイソンと鉤爪の殺人鬼フレディ。ホラー映画に興味の無い人でも、その容姿は一度は目にしたことがあるはず。そんな2人が同じスクリーン上で戦うのが、ファン待望のドリーム・マッチ「フレディVSジェイソン」だ。そこで今回の特集では、「フレディVSジェイソン」のバックグラウンドとなるスプラッタームービーの歴史を紐解きつつ、「13日の金曜日」と「エルム街の悪夢」シリーズにフォーカスを当ててみよう。
スプラッターと「13金」と「エルム街」
(編集部)
スプラッタームービーとは早い話、「血みどろな残虐映画」ということになる。その歴史は意外と古く、今からちょうど40年前の1963年、ハーシェル・ゴードン・ルイス監督作「血の祝祭日」が始まりだといわれている。当時は“スプラッター”という言葉は無く、代わりに“ゴア(血糊)フィルム”と呼ばれた。作品の中身は、目玉をくりぬかれ、頭をかち割られて脳が飛び出す……といった衝撃的な描写のオンパレード。この作品は賛否両論を巻き起こし、日本では公開されることはなかった。
その後、“スプラッター”という言葉を世に知らしめたのは、74年公開のトビー・フーパー監督の傑作「Texas Chainsaw Massacre(邦題:悪魔のいけにえ)」だろう。人の皮を剥いだマスクをつけたレザーフェイスが、チェーンソーを振り回し、次々に人間を肉塊に変えてゆく。レザーフェイスという強烈なキャラクター、そして理由も目的もよくわからないまま無差別殺戮を重ねる異常性が、人々に“恐怖”を植え付けた。この「何がなんだかわからない」タイプの“恐怖”は以後、「13日の金曜日」に受け継がれている。一方、「エルム街」の“恐怖”はベクトルが異なる。睡眠という誰でもおこる生理的現象を利用して、無防備な夢の世界で人を襲い、それが現実世界の「死」となって体現されるという「逃げたくても逃げられない、避けられない」タイプの“恐怖”なのだ。
このように「13金」と「エルム街」では恐怖のベクトルが全く違う。その2シリーズを無理矢理1本の映画、それも対決モノに仕立て上げると“恐怖”のベクトルは“お笑い”のベクトルに転化する。そう、この映画はエンターテインメント性あふれるコメディ映画といって差し支えない。でもそれでよいのだ。「フレディVSジェイソン」はホラーファンに贈るプレゼントムービーなのだから。固唾を飲みながら鑑賞するのではなく、ポップコーン片手に気楽に見るのが楽しい鑑賞法といえるだろう。
さらに楽しみたい方には、過去の「13日の金曜日」「エルム街の悪夢」シリーズを観賞することをお勧めする。なぜなら「フレディVSジェイソン」は過去シリーズへのオマージュともとれるシーンが盛り沢山だからだ。だが、両シリーズ合わせて17本を観賞するには、(観るに耐えない駄作も多いので)よほどの覚悟と時間が必要となるだろう。そこで我々は過去の全作品を超ダイジェストで紹介してみることにした。これさえ読めば、予備知識はバッチリだ。