劇場公開日 2006年1月28日

フライトプラン : インタビュー

2006年1月19日更新

「パニックルーム」以来3年ぶりの主演作となる「フライトプラン」を引っさげ、ジョディ・フォスターが来日した。アカデミー賞主演女優賞を2度受賞するという栄誉に輝き、同世代でももっとも高い評価を得ている大物女優が本作にかけた意気込みや、映画に対する姿勢について語った。(聞き手:編集部)

ジョディ・フォスター インタビュー
「人間の真実が、さりげなくだけどきちんと描かれているわ」

3年ぶり6回目の来日となったジョディ・フォスター
3年ぶり6回目の来日となったジョディ・フォスター

――本作は旅客機内という限られた空間で展開しますが、演じる上で気をつけたところは?

「映画は場面をカットして時空を自在に表現できけど、空間が限られている場合はそうもいかないもの。むしろ舞台に近い感じね。だから事前にきっちり計算して芝居をしなくてはならないけど、私はむしろそこが好きなの。俳優の芝居が全てのペースを決め、場面を転換してごまかしたりできないから」

――本作には“他人の無関心”といったことが描かれていますが。

「私の演じたカイルとその娘は、それぞれ夫、父を亡くして悲しみに包まれているの。誰もが経験したことがあると思うけれど、自分が悲しみに暮れ、一方で周囲の人がのんびりしていると、孤独感や疎外感を一層強く感じる。そして逆に、そのような状態だと周囲からは存在感が消えてしまい、関心を払われなくなってしまう。それは人生の真実だと思うけれど、そこがよく描かれていると思うわ」

――アラブ人が犯人だと決め付けられる場面があり、9・11以降の世界情勢を反映していると思うのですが、その点についてはどう思われていますか?

「今の世界は文化も経済もグローバルでボーダーレスになっているのに、何か大事が起こると、人は本能的に人種差別の意識が蘇るもの。それが現実。だからカイルもアラブ人を犯人だと思い込むのだけど、同時に彼女は『女だからヒステリーだ』と思われるの。これもまた、昔からある偏見のひとつね。そのあたりがさりげなくだけど、きちんと描かれていて素晴らしいと思う。これもまた、ひとつの人間の真実だから」

――精神的に不安定な役ですが、撮影が終わったあとは役から離れることはできましたか?

画像3

「もちろん翌日の撮影のことは頭にあるけれど、それにとらわれることはなかったわ。今回は現場が楽しく、金曜日の夜は毎週ちょっとしたパーティーもして、とても和気藹々としていたから、余計なプレッシャーもなかったの。結論としていえるのは、ハッピーな雰囲気で作ると、その映画はよりベターなものになるということね」

――役作りはどのようにされているのでしょうか?

「監督は最初にキャラクターの変化についてチャート表を作っていたのだけど、私もロジカルで理屈を好む点があるから、私のスタイルにぴったりだったの。彼と私の間はツーカーの仲といった感じね。事前のキャラクター作りはとても理詰めで行い、現場で『アクション!』という声がかかってはじめて、自由に奔放に演技できるの」

――記者会見では「40年間女優をやっているので、選択できるものが少ない」とおっしゃっていましたが、作品選びの基準は?

「まず私を感動させるものであること。それから私に興味をもたせてくれるものであることね。以前にやったことがあるような役には興味がないから、経験を重ねれば重ねるほど、だんだん選択する幅が狭まってくるの。つまり選択すること自体は難しいことではないの。そして40年女優を続けてやっとわかったことだけど、やっぱり映画は監督がいかに重要かということね。一緒に仕事をする監督は、なにかしらのインスピレーションを与えてくれる人、学ぶものを持っている人でなければね」

「フライトプラン」の作品トップへ