劇場公開日 2004年8月14日

「戦争の不条理」華氏911 ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0戦争の不条理

2023年2月7日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

見終わった後、イラク戦争とはどんな戦争だったか振り返ってみた。開戦理由はイラクが大量破壊兵器を保有しているというものだった。だが、このようなものは探しても見つからなかった。そこで、アメリカはフセインはアルカイダと関係しているという理由を付け加えた。かくして軍事介入は始まったが、911のテロリストはサウジ人であり、首謀者のビンラディンはアフガンにいたので、イラクはなんの関係もない。映画の中でムーアはこの不条理を訴えたかった。
さらにムーアが訴えたかったのは、権力者が正義や愛国主義の美名の下に社会の下層の人を騙して戦争に行かせているという事実である。そして、戦争を決めた権力者の議員の息子で戦争に行っているのは1人だけという事実である。金持ちは戦争で儲けて貧乏人は貧乏人同士で殺し合いをさせられる。見るも無残なイラク民間人の被害者、手足を失った軍人病院の兵士たち、息子を失った愛国婦人の嘆きは見るものの心を強く揺さぶる。
ブッシュ再選を阻止するために作った映画だったが、願いは叶わず、ブッシュは再選した。映画では世の中は変えられなかった。
タランティーノは政治は抜きにしてただ面白いと絶賛し、ゴダールはブッシュの戦争決定はそんなに甘いものではないと批判したらしいが、タランティーノがカンヌ映画祭の審査員長だったから、パルムドールを受賞した。

ミカエル