劇場公開日 2004年8月14日

華氏911 : 映画評論・批評

2004年8月17日更新

2004年8月14日より恵比寿ガーデンシネマにてロードショー

プロパガンダに対抗するための、プロパガンダ映画

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「華氏911」を観る前に、ひとつ、知っておいたほうがいいことがある。それは、この映画の標的がジョージ・W・ブッシュ大統領とその政権であるのはもちろんだけれど、批判の矛先は、米メディアにも向けられているということだ。

アメリカ暮らしをしているぼくにとっても、9・11以降のメディアの急速な右傾化は目に余るものがあった。偏った報道ばかりで、急激に視聴率を伸ばしたフォックス・ニュース・チャンネルなんて、まるでブッシュ政権の広報機関である。こんな風潮に対抗するため、マイケル・ムーア監督は、メディアが報じなかった映像のみで「華氏911」を作った。ゴルフをのんきに楽しみながらテロとの戦いを訴えるブッシュ大統領の姿や、爆撃直前の平和なイラク、次々と徴兵されていく貧困地区の若者、病院に横たわる手足を失ったアメリカ兵たち……。ドキュメンタリー映画らしからぬ、そのあまりに一方的な姿勢に戸惑いを感じる人もいるかもしれないけれど、中立性を欠いているのは、偏った報道にさらされていたアメリカ人に向けて作られているからなのだ。

これまでのムーア作品に比べておふざけは少なめで非常にエモーショナルな作品に仕上がっているが、銃暴力を多角的に検証した前作に比べて、あらゆるネタを盛り込んだ今作が統一感に欠けるのは確か。それでも、同時多発テロの報告を受けたブッシュ大統領の「空白の7分間」映像だけでも、見る価値は十分にある。

小西未来

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