劇場公開日 2005年3月19日

「失恋のその先」エターナル・サンシャイン あんのういもさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 失恋のその先

2025年12月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

驚く

斬新

 失恋をした後に、付き合っていた頃の記憶が消えれば楽になるのにな。と思ったことはあるだろか。職場の上司に、毎日ジャイアンツのタオルを首に巻いている人がいた。巨人ファンかと聞いてみたら、阪神ファンだけど若い頃に付き合っていた彼女が巨人ファンだからと言っていた。が、その上司は妻子のある60歳間際である。場合によってはこのように何十年も引きずってしまうこともあるようだ。
 20代の男はある朝、目が覚めると衝動に駆られて普段行かない遠くの駅に向かう。仮病を使って仕事を休むほどの衝動である。その目的地で知り合った同じ歳の頃の女と恋に落ち仲を深めるが、ある日のすれ違いが原因となって彼らは別れてしまう。別れてすぐに男は女の職場に行き話しかけるが、女は男のことを覚えていない。それどころか、すでに女には恋仲風の別の男がいた。男が後悔に打ちひしがれていると、知人の1人があるカードを男に見せる。そこには「女の記憶から男を消した」と書かれていた。男がそのカードに書かれていた会社を訪ねると…。というようなあらすじである。
 まず、テーマがよい。誰しも経験したことのある失恋と後悔。それに留まらず、好きだった人についての記憶の削除。ここまで描いた本作は多くの人がというより、ほぼ全ての人が共感できるのではないだろうか。
 この映画で印象的に描かれており、核となっているのが記憶を消すシーンである。このシーン、ただスイッチを押すだけでは終わらない。例えば男の中にある女についての記憶を消すとする。専門の業者が男が寝る際に、頭に機械を取り付け、脳の画像を基に女にまつわる記憶を見つけ出し削除していく。その間、男は夢の中で女と共に過ごしているが、次の瞬間女は跡形もなく消えてしまう。それにとどまらず女と一緒に行った場所や建物も崩れ去る。次々と消えてゆく。その繰り返しである。その映像表現が優れている。記憶が消えたことによって認識できなくなった人の顔は、タイツを被ったようなのっぺらぼうになり、今の今まで戯れていた女は一瞬で跡形もなく消える。失恋した後の、消失や喪失という感情、心理。またその恐ろしさを鮮明に表現している。
 恋人というのは一時の些細なすれ違いで別れてしまうこともある。この映画は終始そういったことに焦点が当てられている。付き合い始めたカップル、最近うまくいっていないカップル、別れてしまった人たちそんな人にぜひ見てほしい作品である。私もあのとき見ておけばなぁ...。なんてネ。

あんのういも
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