エターナル・サンシャイン : インタビュー
「ヒューマンネイチュア」以来2度目のコンビとなるミシェル・ゴンドリー監督と脚本家チャーリー・カウフマンの最新作「エターナル・サンシャイン」。アカデミー賞脚本賞も見事受賞した本作だが、果たしてどのように生まれたのか? ゴンドリー監督とカウフマンが創作の過程を語る。(聞き手:町山智浩)
「エターナル・サンシャイン」はこうして生まれた
「エターナル・サンシャイン」の原題「Eternal Sunshine of the Spotless Mind(一点の汚れもなき心の永遠の陽光)」は、劇中でメリー(キルステン・ダンスト)が言うように、18世紀の英国詩人アレキサンダー・ポープの恋愛書簡詩「エロイーザからアベラードへ」からの引用だ。
「このタイトルは一発で覚えにくいから面白いと思ったのさ」脚本家のチャーリー・カウフマンは言う。「実は、僕の『マルコヴィッチの穴』でジョン・キューザックが路上で演じている人形劇もアベラールとエロイーズの物語なんだ」
ポープの詩は12世紀フランスに実在した神学者ピエール・アベラールと弟子の女性エロイーズの書簡を元にしている。2人の「主体的恋愛」は、ジャン=ジャック・ルソーの「新エロイーズ」やシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」に影響を与えた。これはロマンチックなだけの純愛物語ではない。アベラールは娘ほど年の離れた弟子エロイーズを篭絡するために老練な手管を使い、エロイーズはアベラールに結婚を申し込まれても「私は妻より愛人と呼ばれたいの」と、所有されることを拒否する。彼女は修道院に入り、2人の関係を知って怒り狂ったエロイーズの叔父はアベラールの性器を切断してしまう。この実話は男女の噛み合わない心という現実を教えてくれる。
映画「エターナル・サンシャイン」も現実の恋愛から生まれた。
「友達の芸術家、ピエール・ビスマスと食事していたら、彼がガールフレンドのことが嫌で、彼女の記憶を一切消したいと言い出したんだ」ミッシェル・ゴンドリー監督は回想する。
「そこから、記憶を消去してくれる会社の話を思いついた。それを映画にしたいと言うと、みんなすぐにSFサスペンス・アクションにしようとした。『トータルリコール』みたいにね」
ゴンドリーはプロモーション・ビデオ仲間のスパイク・ジョーンズからチャーリー・カウフマンを紹介された。
「カウフマンは男女の恋愛話にしようと言ってくれた。それから2人で脳と記憶の仕組みについて研究してシナリオを書き始めた」