「二人の女優の演技の良さと、ビジネスの物語としての不満」プラダを着た悪魔 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
二人の女優の演技の良さと、ビジネスの物語としての不満
総合:70点
ストーリー: 60
キャスト: 85
演出: 70
ビジュアル: 75
音楽: 75
ファッション業界の個性の強い凄腕編集長とその下で働く新人の話。
メリル・ストリープが業界の有名人役を圧倒的な存在感を発揮しつつ演じれば、それに振り回されるアン・ハサウェイの等身大的な演技が面白い。この二人の掛け合いがこの映画で最も気に入った部分である。
しかし映画の舞台がビジネスに関することであり、自分の専門上どうしても個人的にはビジネスに関する物語に目がいってしまう。ファッション業界という場所で働くのならば、単に仕事に関する専門知識があればいいというものではない。直感や感覚といったものが非常に重要になる。
それはわかるのだが、それにしてもメリル・ストリープの公私混同振りと我儘ぶりとパワハラぶりはひどい。それも結果が出ているし有能であるから許されるのだろうが、どうも彼女の組織を率いる管理者としての資質を好きになれない。だから彼女の地位を他に入れ替えたいという上司の気持ちもわかる。
だがそれを上司に対しては部下を引き連れて一斉退職という脅迫、後継者に対しては新ブランド立ち上げの責任者という餌をぶら下げて組織の外に追い出すという政治手腕を見せられては沈黙するしかない。もう見事な独裁者ぶりであり、ビジネスの結果を出しているだけでなくこれだけの政治手腕があるから地位を保てているのだろう。
それでもやはりこれだけ上司として欠陥だらけと思われる彼女が厳しいけど本当はいい人みたいに描かれていることに、ビジネス物映画としての物語性には不満がある。結局この独裁者がまだまだ君臨し続けて恐怖政治が続くのかと思うと、ちょっとばかりうんざりする。気になったのでちょっと調べてみたら、未確認情報ですがどうやら原作の小説では結果がかなり異なっていて二人が対決するようであり、やはりそうじゃないと物語としては駄目だろうと思いました。
出演者の演技・ファッション雑誌という特殊な業界の内情の描き方とかは良かったのですが、ビジネス物映画の物語として捉えた場合は少々不満です。それでも総合ではまずまずの映画でした。