「改めて。」プラダを着た悪魔 JYARIさんの映画レビュー(感想・評価)
改めて。
改めて、三人の女優の演技力を見て感動した。
まずはメリルストリープ。
さすが大女優だわ…では済まないくらいの演技の幅を見せつけられた。
出勤するだけで恐ろしがられるトップの人間から、実は家庭問題で悩める一人の女性、またラストでは旅立った若者を見守る母性、と思いきや次の瞬間には「go.」と冷たく言い放つ。
一コマ一コマの表情がここまで違うのか。
この人は彼女の役柄をよく理解している。だからこその表情。その役柄を自分の中に探して演じるタイプなんじゃないかな。
次にアンハサウェイ。
うん、どんなファッションでも似合っちゃうね。いつもの皆様が嫌いな鼻につく感じは出てなかった気がする。
そして、エミリーブラント。
彼女がいなければきっとここまでの良作にはなっていないであろう。
それほどに素晴らしかった。「嫌なやつだけどどこか憎めない先輩」を体現していましたな。彼女が泣きそうになっているとこちらまでウルウルしちゃうよ。
さて、何回も鑑賞しているくせに分からない点がある。
「何故、アンディはあのタイミングでアシスタントを辞めたか」ということである。
ラスト、展示会へ向かう車の中での会話がヒントだろう。ざっくりいうと
ミ「あなた、私に似てるわ、人よりも自分の決断を優先する」
ア「私は違います」
ミ「もうエミリーにしているじゃない」
ア「あれは仕方なく…」
ミ「でもあなたの決断はこの世界では正しい行いよ」
ア「この世界が、あなたのような生き方が嫌だったら?」
ミ「バカ言わないで、誰もが望んでいるわ、この生き方に誰もが憧れているのよ」
そう言われたアンディは車を降り、展示会場とは逆のほうへ歩き出す……
単純に解釈すれば、本当にこの世界を嫌だと思っていたので辞めた、が正しいだろう。そして自分らしい格好をして、自分のしたかった仕事に就く、という流れもその理由からだろう。そしてその世界のトップと同じ行動をとりたくなかったためか、彼氏の元へ行き謝罪をする。
本当にそうなのか?アンディは単純に今までの生活に戻っただけ?
そうじゃなく、もうあちらの世界の総てを知った今、彼女は次の世界(出版業界)へ行くことでさらにネクストステップに進もうとしているのでは?
つまり、嫌な人に仕えるのが嫌になったからでなく、自分がもうあの人に仕える分際ではないと知ってしまったからではないのかな。そう見ると、余計にエミリーが悲しく見えるな…幸せになってほしい…
なんかよくわからない。本当に。
ミランダが嫌になったから辞めたのなら、あそこまで続いていたのが奇跡じゃない?もうとっくに辞めててもおかしくないでしょ。
だから、出版業界のミランダになる!が正しいラストの解釈だとおもうんだよなあ。
てか一般的な解釈がそれだったらどうしよ。
ミランダに仕えることが嫌になったからではなく、その世界では正しいことであるらしい彼女の生き方に、そしてそれは全く本来の自分らしくない生き方に、その世界の魔力からか、片足を突っ込んでしまっている自分に気付き、夢から覚めたようになってその世界を離れた。
アンディが自分の望む生き方に改めて気付く。元に戻ったのではなく、とても大事なことに気付けた成長物語だと私は感じました。