劇場公開日 2026年1月23日

MERCY マーシー AI裁判 : 映画評論・批評

2026年1月22日更新

2026年1月23日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

新たな映画言語〈スクリーンライフ(Screenlife)〉が切り拓くSFアクション

2004年に監督作「ナイト・ウォッチ NOCHINOI DOZOR」がロシア歴代興行成績第1位を記録、その後「ウォンテッド」でハリウッドに進出した、カザフスタン出身のティムール・ベクマンベトフ。彼の新作は、クリス・プラットレベッカ・ファーガソンカーリー・レイスらが出演する、AIをテーマにしたサスペンス・アクションだ。

2029年のロサンゼルス。妻殺害の容疑をかけられたレイヴン刑事(プラット)の審理が、AI裁判官マドックス(ファーガソン)のもとで行われている。90分以内に潔白を証明できなければ死刑が確定し、その場で執行されてしまう。レイヴンは相棒の刑事ディアロ(レイス)らの協力を得ながら、デジタル技術を駆使し、画面上のみで事件の真相を追っていく。

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アンフレンデッド」「search サーチ」のように、デスクトップ画面上で全編が展開する“スクリーンライフ”方式を採用しているのが本作最大の特徴だ。この画期的なスタイルを提唱してきたのが、両作のプロデューサーであり、本作の監督でもあるベクマンベトフである。過去に映画関係者とオンライン会議をした際、相手が画面共有機能をオフにし忘れ、デスクトップを数分間覗き見てしまったことから着想を得たという。彼はこの方式について「観客の理解を根本的に変える新しい表現。もうこの形でしか映画は作らない」と語るほどのこだわりを見せており、実際にデジタル・ネイティブなZ世代からアルファ世代の支持も高い。

従来のスクリーンライフ映画は、無名の若手俳優を起用した低予算作品が定番だったが、本作ではプラットとファーガソンという2大スターを迎え、物理的な現実世界――セキュリティ映像、ドローンショット、ボディカメラ、ビデオ通話など――によるカーチェイスや銃撃戦が加わることで、リアルとデジタルが混在するハイブリッドなアプローチを実現している。

メイン以外のキャストにも注目したい。現場で動くディアロ刑事を演じるカーリー・レイスは、女子ボクシング元世界王者という異色の経歴を持つ俳優だ。ドラマ「トゥルー・ディテクティブ」ではジョディ・フォスターと共演し刑事役を好演、先ごろ発表されたリブート版「バイオハザード」でも新キャストに選ばれるなど注目度は高く、本作でもキレのある格闘シーンでフィジカルな説得力を担っている。

さらに本作はIMAXや3D上映にも対応し、重要な場面では一部のシアター限定で拡張アスペクト比が採用されるなど、視覚的にもスケールアップを図っている。AI裁判という設定のタイムリーさも含め、ホラー色の強かった従来のスクリーンライフ作品に、SFアクション、法廷劇、心理ドラマを融合させることで新たな進化をもたらした一本だ。アワード・シーズン外の日米同時公開となるが、スマートフォンやPCの画面に親しんだ現代の観客にとって、極めて相性の良いアクション映画として注目したい(上映形式の詳細は各劇場にてご確認ください)。

本田敬

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