デイ・アフター・トゥモロー : 特集
第1回:ローランド・エメリッヒ監督について
あまり知られてない10の事柄
編集部
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縁のないお金はネコババしない正直者
「インデペンデンス・デイ」がヒットしてすぐに、20世紀フォックスがエメリッヒに作って欲しかったのはその続編。彼の口座には、すぐに製作費が振り込まれたが、エメリッヒはそれを返金した。「ディーンと僕は続編を考えてみたけど、どういう設定にしても同じことの繰り返しにしかならないと思ったし、それはやりたくなかった。だから僕らはフォックスにお金を返しに行ったんだ。“皆さん、いただいたお金を返さなくてはなりません”って。こんなことが起きたのはハリウッド史上、初めてじゃないかな。すごく残念だったさ、でもほかにどうしようもないもの」(04年発言)。
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面目ない、とマリオ・カサールが頭を下げた
「ターミネーター」の製作総指揮マリオ・カサールは「ランボー1~3」「ターミネーター2、3」「氷の微笑」などのヤリ手プロデューサー。「スターゲイト」の製作総指揮も担当したが、エメリッヒ版が気に入らず、別の編集マンを雇って編集し直した。ところがこれが試写で大不評。そこでカサールはエメリッヒを呼び戻して彼のバージョンを公開、映画はちゃんとヒット作に。エメリッヒはカサールに頭を下げさせた経歴の持ち主なのだ。
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リッチじゃなくても愛があれば
「僕がSF映画を撮るのはSFが好きだからだ。何かを作るときに大切なことは、もっとも好きなことをすることだと思うんだ。お金やキャリアのためじゃなく、やってて楽しめることが大事だと思う」(94年発言)。今やお金もキャリアもしっかりゲットしたエメリッヒだが、それはこうした心意気の結果だということで。
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辛い批評にもめげず映画はヒット
「ユニバーサル・ソルジャー」から「パトリオット」まで、エメリッヒのハリウッド作品は、それほど良い批評には恵まれておらず、映画批評家賞の類にもノミネートされたことはない。が、実はすべてがヒット作。「インデペンデンス・デイ」は興収3億ドルを叩き出して全米歴代17位だし、日本では不評だった「GODZILLA/ゴジラ」ですら全米の興収は1億3600万ドルと決して悪くない。批評家たちが何と言おうが、エメリッヒは映画を楽しみたい観客たちに彼らが求めるものを提供することが出来る監督なのだ。
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密かにアートな若者だったらしい
今はそんなヒットメーカーのエメリッヒだが、最初に興味を持ったのは映画ではなく、彫刻と絵画。アートな青年だったのだ。その後、映画に興味を持つようになってミュンヘンの映画学校に行き、その学校で撮った第1作「スペースノア」が84年のベルリン映画祭に出品されて注目を集め、世界約20カ国で公開され、後はご存知の通り。ちなみにこの第1作は今でもドイツ学生映画史上もっとも製作費のかかった映画だと言われている。エメリッヒ、どうやら最初から大作指向の人だったようである。