非常戒厳前夜のレビュー・感想・評価
全6件を表示
「ニュース打破」の闘い
期待外れのストーリー
ユン・ソンニョル大統領側のストーリーかと思って観に行ったが、逆だった。
プロパガンダ側の映画なら、ポレポレ東中野で公開しなくても、その辺の映画館で公開すれば良いのでは?と思いつつ、
確かにドキュメンタリーで一般受けはしない映画である。
ドラマよりスリリング
韓国現代史映画の切れ味はドラマだけではない
昨年12月3日、韓国のユン・ソンニョル政権がいきなり戒厳令を宣布したとのニュースには驚かされました。1980年代のチョン・ドファン(全斗煥)大統領の戒厳令とその後の混乱がまだ多くの国民の記憶にある中で「なぜ?」の疑問が拭えません。韓国国内にそれほどの危機が迫っているとも思えませんでした。ましてや、大統領就任前のユン・ソンニョルには「権力に屈しない検察官」との肯定的なイメージすら抱いていたのです。
本作は、ユン大統領が何に追い詰められていたのか、検察官時代から彼が如何に多くのスキャンダルにまみれて来たのか、そして、大統領就任以降どれほどの言論を弾圧して来たのかを記録したドキュメンタリーです。それを撮ったのが、政権からの圧力に屈する公共放送局を辞したジャーナリスト達が立ち上げた独立系メディア「ニュース打破(タパ)」です。報道の自由を守らんとする彼らの苦闘は、『共犯者たち』(2017)でも力強く描かれていました。この日は、キム・ヨンジン監督、及び作中にも登場するハン・サンジン、ポン・ジウク両記者が韓国からお越しになっての舞台挨拶があるとの事だったのでこれは見逃す訳には行かないと駆け付けました。恐らく同じ思いであったろう人々で館内は満席でした。
さて、近現代史を緊張感あふれるドラマにするのは近年の韓国映画の得意技で、数々の秀作を生み出していますが、政権の圧力に粘り強く抵抗するニュースタパを追う映像にも同じ様なドラマ性が溢れ、観る者を圧倒します。そして、権力からの圧力に屈しそうになって悔し涙を流す記者の面構えがカッコいいのです。
そして上映後、舞台挨拶の為に韓国からお越しの監督・記者の方の「ニュースタパの主人公は市民です」の言葉に胸を衝かれました。そんなクサい台詞は日本のジャーナリストからもう聞く事は出来ないでしょう。また、そう胸を張って言える人も居ないのではないでしょうか。でも、クサいからこそ力があるのは、直球勝負を得意とする韓国映画の伝統がここにも生きている証です。
ただ、本作で紹介される大統領の数々のスキャンダルは日本では余り知られていないだけに、それぞれに背景の説明が詳細に欲しかったです。
「ニュースタパが不正と言っているのだから不正があったに違いない」
などと妄信する事は、権力によるプロパガンダと同じ様に我々の眼を曇らせます。だから、その記載を期待してパンフレットを買ったのですが、やはり不十分だったのが残念です。
全6件を表示