ダンサー・イン・ザ・ダークのレビュー・感想・評価
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頭の中でなら誰だって救われる
極当たり前のことですが、頭の中での空想なら誰だってヒーローで誰だって幸せになれます。ですが、それを実現できる人はいますか?いませんよね。
そもそもの話、頭の中で考えたことを実行にうつせる人は空想しません。その前に具体的な解決策と行動を描いて実行しちゃうので。そういうものです。
この映画の主人公がなぜなにもしないのか?しないのではなく、出来ないのです。そういう人は多いでしょう。私も時おりそういう状況になってもどかしく、そして後悔し無力感に苛まれます。
反論すべきならしろ、嫌なら嫌と言え、逃げたいなら逃げろ、実に一方向的なアドバイスです。なぜしないのか、なぜ出来ないのか、そういう人たちはどういう感情でいるのか。それを改めて考えさせられる映画です。
上手く出来た映画
この映画を見た最初の感想は「なんだよこのクソ映画!」でした。全部悪い方向に進んでいく…といえば聞こえはいいもの、ビルに金を取られてから殺すまでのくだり以外全部自業自得じゃねーか!というか諸悪の根源は見栄のためにリンダに本当の事言わなかったビルじゃねーか!って怒りが止まりませんでした。
でも、客観的に物語としてこの話を見てみると彼女に降りかかる不幸にはセルマのジーンへの愛を際立たせる役割があるんじゃないかと気が付きました。信仰のために殉教する聖人の伝説とかと同じで、自分がいかな不遇、苦痛に遭おうとも息子の為に健気にその境遇に甘んじ死ぬ母の美談というのがこの映画の本筋だと私は感じました。ただこの映画のミソはその重要な本筋である「母であるセルマ」が全体を通して霞みやすいところにあるのではと思います。セルマとジーンが直接会話するシーンって冒頭に集中してる上にかなり少ないんです。しかも大体の場面でセルマはジーンを叱ったり注意したりしている。息子への愛あればこそ厳しく接するのでしょうが、セルマが息子を愛していると周囲に話すシーンは結構あるのに実際に息子と話すシーンでは愛情表現をする描写が殆ど無い。ゆえに見ている我々にはいまいちセルマのジーンへの愛に実感が持てない。その上描写が序盤に偏ってるので、セルマが絞首台に向かう頃にはジーンの顔を思い出せないぐらい印象が薄まってくる。親子愛の美談なのに肝心のセルマのジーンへの愛情を感じられないのは致命的です。だからセルマの献身的な愛よりも社会的弱者が踏みにじられている状況が心に強く残り結末に救いを見いだせなくなる。これがこの映画を見た時の胸糞悪さの原因だと思いました。で、この親子愛の描写の少なさ、恐らくですが意図的に作られたものだと思います。だって終盤明らかにジーンの登場が減るじゃないですか?キャシーが面会に連れてくるとか絞首台にキャシーが来るシーンでワンシーンだけ外にいるジーンを映すとかで観客側にジーンの事を意識させる事はできるわけですよ。それをしなかったのは見た人の大半には単なる美談だと腑に落ちないで欲しかったからじゃないかと思うんです。単に美談で終わらせるなら別に主人公はチェコからの移民じゃなくていいし盲目じゃなくていいし、なんならシングルマザーじゃなくてもいい訳です。移民だからと裁判では冷ややかな目で裁かれ、目が見えないと働き口が見つからないから盲目であることを隠している。セルマは無実だが死刑執行後誰一人真実を知ることは出来ず、親に先立たれたジーンはこれから1人で生きていかなければならない。セルマが社会的弱者だからこそ、救いの無い結末を見終えた観客に移民差別や障害者雇用、死刑制度での冤罪といった問題を意識させることが出来る。この作品は、子への愛の美談を大筋に据えながらあえてその要素を薄くする事で社会問題について我々に問い掛けている、というのが私の見解です。
作品の狙いについて一通り考察したのでミュージカル要素についても軽く触れますが、ミュージカル映画では珍しくミュージカルパートが主人公の想像な訳ですが、この空想によるミュージカルパートが「頼れる親に類もおらず辛い境遇にありながらも息子の為だけに働いている」という想像、共感しにくい存在なセルマと私達観客を繋いでくれています。工場でのミュージカルの時点ではミュージカル好きなセルマの空想、といった感じでしたがビル殺害後からは現状が耐え難いセルマの現実逃避としての側面が強まり、明るく楽しいミュージカルとは裏腹に無情にも好転せず悪くなっていくばかりの現実に絶望するセルマの感情が私達観客にひしひしと伝わってくるいい表現だと感じました。
総評すると、上手く作られていて一枚岩とはいかないよく出来た作品なのですがやっぱりもう二度と見たくないです。特にビルからお金を盗まれるシーンは被害者なのに盗人のように扱われ泣き出すセルマが本当に痛ましいし自己保身しか考えないビルもビルの言う事しか聞かないリンダも腹立たしくて見てられないです。思い出しても嫌な気分になります。でも嫌な気分になるからこそ沢山考えさせられる作品だと思います。
鬱映画だが個人的には最高の映画
感情移入というよりももっと上の次元に感じた。思えば最近の映画はどのようにハッピーエンドで終わらせるかという感じがある。映画館に映画を見にくる人たちは音や映像美を楽しみに来ており、胸糞悪くなるバッドエンドは求めていないのだ。この映画は興行収入を高くする目的で作られたわけではない。見た人に何かを感じさせる映画だということはこの賛否両論のレビューが物語っていると思う。
ただ個人的には国内の暗いニュースから目を背け、すぐ失敗した人をけなすようなワイドショー的番組にチャンネルを切り替えてしまう人や、誰かを誹謗中傷することにとりつかれた一部のsns中毒者にはこの思い内容は耐えられないのかなと思った。(誰かを責めるつもりはありません)
この映画勧めてきた友人に一言
なんでこれ勧めたの?
鬱じゃん、こんなの
どんな気持ちで勧めたの。よく嬉しそうに作品名言えたねぇ。鬱映画勧めるノリじゃ無いでしょ。
セルマの友人が「死刑の時見送りに行く」って言って、セルマが「(死刑執行の様子に)耐えられるなら見に来て」とか言ってたけど、観客からしたら拒否権無いんだよ。見るしかないんだよ。最後まで。
ちょっと期待してたんだよ死刑流れてなんとかなるでしょって、ならないじゃん。これからチャペル風の音楽聞くたびセルマのこと思い出すよ。結婚式で歌が流れてお嫁さん幸せそうだな〜って思いながら、けどセルマは監獄で死ぬ前同じの聴いてたんだよな…って悲しくなるよ。
それにしても警官なんでセルマに撃たせたんだ?最初の一発だけなら生きられるレベルでは?裁判の具合から言ってセルマの負けが確定してるし、セルマに自分を撃たせず、セルマが自分から撃ったことにすれば良いのに…そうすれば命も助かってお金も手に入って win winだったのに…よく分からない…
泣きじゃくった
音楽がいい
ビョークの声
胸糞というかイライラ映画
ビョーク恐ろしや
不安な瞳をみることに興味があるのか。
切なくて、心に刺してくる映画
そりゃ凄いですよ!
なんというべきか…凄まじい映画ですね、この映画を観た方はその点では全員一致すると思います。
こんなに独特な映像なのにとても自然に鑑賞できるというのは、もはやどういうことなんでしょう?カメラワークはドキュメント風とでも言いましょうか、監視カメラの映像もリズムを持っていかれるアクセントになっていました。何というか、我々鑑賞者の意識と、カメラの向こう側の演技の意識と、あとそのカメラを構えている撮影側の意識が存在する様に感じます。普通なら撮影側の意識は感じない、感じさせない様にする物だと思いますが、最初からまさにドキュメンタリーの様にハッキリとそれを感じました。もちろんすぐ慣れていきますが、その意識がある事によって本当に起きた事実の様に感じてくる様な物凄くリアリティのある映画でした。
そう、普通に考えれば全然リアルな設定ではないし、全然リアルな展開でもありませんね。アメリカの司法に詳しい訳ではありませんが、いくら警官殺しの強盗殺人だって、一発死刑は考えにくいものです。その説得力がウルトラC級の飛び道具的な撮影手法で、空前絶後の大仕事をしています。
そしてビョークの演技が凄すぎて震えました。観賞後にこの女優さんが噂に聞くビョークなのかと調べて初めて知ったのですが、とにかく半端じゃなかったです。他の出演者の方たちも凄かったです。特に看守役の方とビル役の方は胸が熱くなる演技でした。
音楽も良かったです!世界観そのまま、この鬼鬱ミュージカルを引き立てています。トムヨークとビョーク?そりゃあ 凄いに決まってるでしょうが!
工場のミュージカルシーンはいやいや頼むから集中してくれと、めちゃくちゃドキドキしながら祈る様な気持ちで観てしまいました。
セルマは愚かです。それは否定できないでしょう。しかしその愚かさには些かの悪意もありません。心から他者を思い、ただ誠実にあろうとするなかで、災を招いてしまったのです。おそらく意図的でしょうが、彼女の宗教的な描写はほとんどありませんでした。まあおそらくはキリスト教系であろうかと思われます。描写しない事によって際立って彼女の聖性が強調されている様に感じました。おそらくこの映画の鑑賞者は、彼女の周りにいる人たちに感情移入する様に作られているのではないのでしょうか。だってセルマに感情移入出来ないでしょう。余りに尊いし、余りに愚かです。彼女を取り巻く我々と同じ価値観を持つ人たちの感情と葛藤がこの映画の小さくない鑑賞点だと思います。
こうならないでくれ…!と願う鑑賞者をバカにするかの様にどんどん最悪に向かってストーリーは進みます。セルマが最後に最低限生きた意味を感じ、救われたとあのラストで解釈しました。そういう点では彼女にとってはギリギリハッピーエンド?と言っても過言ではないでしょうか(過言か?)。少なくとも私はあのラストに救われました。納得できました。寝付きもそんなに悪くなかったです。
映画館以外での鑑賞を一切考慮せずに作られた作品のように感じました。願わくばいつか劇場でこの作品をまた観れたらと、心から思います。
"救い"という言葉を知らない鬱くしく残酷なリアル
噂には聞いていたどうりの鬱ぐあい。常に考えられる最悪な結末へ進んでいく。最初はドキュメンタリー風な映像や切れ味の鋭い編集などに違和感を覚えたが1つ目のミュージカルシーンがきてから納得。ちゃんと意味がある撮影方法と編集でした。
身近な音でリズムをとるというのは視力の悪い自分には痛いほど分かる。視力が悪いと遠い物などはぼやけて見えるだけであとは想像と直感だけがたより。しかしその想像と直感が案外当たる。もしこれが失明した人物だったら?おそらく勘は恐ろしいくらいに鋭いだろう。工場で「目をつぶってもできる」みたいなセリフはすごく響く。視力の悪い人は結構隠そうとしたり強がる傾向があるからだ。それを踏まえてのミュージカルシーン。本来ならハッピー!なシーンなのに何故か泣けてしまう。これは目の不自由な人をリアルに描いているのもあるし、なんと言ってもビョークの歌声に酔いしびれるからだと思う。
ラース・フォン・トリアーは「とにかく過激!」というイメージが強くて敬遠していたけど見直した。他の作品も観てみたい。
鬱で有名だけど是非観て欲しい作品。
ミュージカルが苦手な自分でも今作は心にグサリと刺さりました。
生涯トップ5には入る傑作です!
それにしてもミュージカルシーンの後に決まって鬱展開があるのには生気を吸い取られる…
理不尽だなぁと
友人にコロナの自粛期間中に絶対見ない方がいいと言われたのと、Netflixで5/5までだったため、急いで鑑賞
ミュージカルの良さは私には全くわかりません。
ですが、それを通して彼女の素敵な妄想が伝わってきます。
友人に鬱になると言われていたのですが、私の場合はむしろ、警官に理不尽なことで有罪判決を言い渡され、主人公がなすがままにされてたことに対して少し苛立ちを覚えました。
もちろん主人公は、自分の息子のことのみを想ってそういう行動をしているわけですが…
とにかく、私にとっては主人公が一生懸命に働いて得たお金を、自分の都合の良いようにして彼女の人生をどん底に突き落としたことに対して、非常に腹が立ちました。
こんな理不尽…あってたまるか……
My Favorte Movie
いやぁ、これはいい!最初はミュージカルなんかじゃなくて、ドキュメンタリー風ドラマかと思いました。最初の30分は「どうしようもなく暗い映画だな~」と、途中で見るのを止めようかとも感じたんですけど、夜勤の工場でいきなりミュージカルになったもんだから、胸が躍る想いで没頭してしまいました。
カメラワークにも注目してたのですが、ハンディーカメラと固定カメラを使い分けてますね。それが感情移入を誘うのだけれど、ミュージカルシーンは意外ときちんと撮ってあり、驚かされます。60年代の移民問題を若干の風刺として扱っていたり、障害者の問題提起としても取られがちですが、そんなことは些細なことのような気がする。純粋な心を持った女性とミュージカルへの夢想癖を持った女性を描いただけの映画だと思います。
子供のために「母」を取るか、「目」を取るかで議論しているレビューサイトもありましたが、そんな議論自体が不思議でしょうがない。「目」に決まってますよ(きっぱり)。それが信念であり、彼女の生きがいだったのですからね。犯した間違いは可哀想でしょうがなかったけど、工場をクビになった時点でそれは結果オーライになったと思います。この先、息子のために収入の無い生活を続けるなんて、考えただけでも恐ろしい。
ラスト近くでは、『サウンド・オブ・ミュージック』の「my favorite thing」が全てを象徴していました。また、最後から2番目の歌ってところにも・・・だから、最後のシーンは想像つきました(笑)
オールタイム・ベストの20位以内くらい。
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