ホーリー・カウ

劇場公開日:2025年10月10日

解説・あらすじ

「フランスで最も愛されるチーズ」と言われるコンテチーズの生産地・ジュラ地方を舞台に、無軌道に過ごしてきた青年がチーズ職人だった父の死をきっかけに、幼い妹と生きていくためチーズづくりに挑む姿を描いた青春ドラマ。

ジュラ地方で暮らす18歳のトトンヌは、仲間と酒を飲み、パーティに明け暮れる気ままな日々を過ごしていた。ある日、チーズ職人の父が不慮の事故で亡くなり、トトンヌは7歳の妹の面倒を見ながら、生計を立てる方法を見つけなければならなくなってしまう。そんな中、チーズのコンテストで金メダルを獲得すれば3万ユーロの賞金をもらえることを知った彼は、伝統的な製法で最高のコンテチーズをつくることを決意する。

ジュラ地方出身の新鋭ルイーズ・クルボワジエが監督を務め、美しいだけではない農村の暮らしを圧倒的なリアリティで描き出す。キャストには地元の演技未経験者を起用し、農場を営むクルボワジエ監督の家族が音楽や美術スタッフとして参加。2024年・第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にてユース賞、2025年・第50回セザール賞にて最優秀新人監督賞を受賞し、小規模作品ながらフランスでは約100万人を動員する大ヒットを記録した。

2024年製作/92分/PG12/フランス
原題または英題:Holy Cow
配給:ALFAZBET
劇場公開日:2025年10月10日

オフィシャルサイト

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第77回 カンヌ国際映画祭(2024年)

受賞

ある視点部門
ユース賞 ルイーズ・クルボワジエ

出品

ある視点部門
出品作品 ルイーズ・クルボワジエ
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(C)2024 - EX NIHILO - FRANCE 3 CINEMA - AUVERGNE RHONE ALPES CINEMA

映画レビュー

3.5 葛藤を抱えた青年が一歩大人へと踏み出す様を描く

2025年10月29日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

トトンヌは、少年と呼ぶにはもう身勝手が許されない年頃。かといって大人と呼ぶにはまだ早い。そんな”宙ぶらりん状態”の主人公が突如として一家の働き手となるーーー。出演者の誰もが演技経験のない素人だらけの本作は、この農村エリア出身の新人監督が手掛けているだけあって、若者らのナチュラルで時に生々しい表情や心情を有機的に引き出し、発酵、熟成させた一作である。とりわけ主演俳優の相貌はどこか若い頃のジェイミー・ベルを彷彿とさせるところがあり、目の奥に怒り、不安、戸惑いが渦巻く様はとても魅力的。葛藤を抱えながら大人への階段を昇っていくその姿は、ご当地特産のコンテチーズの製造過程と絶妙に重なる。ラストも決して絵空事の夢を掴むようなものではなく、あくまで「一歩踏み出す」というレベルに抑制されている点が共感を呼ぶ。小さな物語ではあるものの、これまで描かれてこなかった酪農生活のリアルに目を向けさせてくれる良作だ。

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牛津厚信

2.5 ラストが気持ちいい

2025年11月29日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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ひでちゃぴん

3.5 悪い事をしてはいけない

2025年11月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ネタバレ! クリックして本文を読む
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hanataro2

5.0 緩急見事なフランス産傑作青春映画

2025年11月17日
Androidアプリから投稿

グーグルのAIといつも映画について情報交換している。自分の好きな映画の傾向から、AIがこの作品は絶対に劇場鑑賞すべき、と勧めてきた。各映画サイトの点数があまり高くないから期待していなかったが、危うく、こんなに素敵な映画を見逃すところだった。完璧だった。自分が映画に求めるものが、ぎゅっと詰まった名作。自分が見てきた青春映画/ドラマというジャンルなら、映画ではなく申し訳ないが「北の国から'87初恋」に次いで、ホーリー・カウが生涯第二位になった。
シンプルな作り。一見荒々しくて、でも繊細で優しい作品。物語に不要な一切の要素は省かれ、青春ドラマとしてトトンヌの成長を表現するために必要なことは全部入っている。さらに、肝心なところは逃げずに、撮影が大変であろうシーンをじっくりと見せてくれた。ここには映画として究極の洗練があった。
前半、トトンヌが怠惰な生活を送り、対人関係も雑に振る舞う間は、映画自体も、構成なのか、映像なのか、わざと洗練を排除して粗雑な印象を受けるように作られている感じがした。しかし、最初は牛乳を盗むためだった牧場の彼女との間に、少し想い入れが芽生えてきて、自分の仲間との間に挟まれたトトンヌに人間らしい葛藤が生じてきたあたりから、映画の質もぐっと高まってきた。主人公の成長と、映画自体の構成力のカーブを合わせるとは(意図したかどうか分からないが)、物語がシンプルな分、やることはやってる監督のセンスが見事だなと感じた。
この映画は一方では省略をきらい、大変なことを真正面から丁寧に描く。一つは牛の出産とともに主人公に葛藤が生まれる大切な場面。きめ細やかにリアルな描写があった。どこまでが実際の映像で、どこからが加工されていたかは分からないが、あの撮影には沢山の苦労があっただろう。次に、妹のリードにより二人で初めてチーズ作りに成功する場面。丹念に各工程を見せつつ、兄妹の絆が深まっていることをじっくり見せる。ぼくの涙がどんどん溢れてきて、良いチーズが出来て欲しいと願いながらスクリーンを見つめた。物語をわかり易く伝えるためのエピソードの織り込み方と、人間ドラマとして面倒を厭わずにじっくりと描く場面、この対照が上手く、センスに唸らされた。物語自体はありがちなのに、監督の演出センスと俳優陣の自然体の演技が重なり、こんなに素晴らしい映画を久しぶりに観た、と爽やかな感動に包まれた。
グーグルAIは、やはりカンヌでの受賞実績と、フランス国内での興行的な成功を重視したのだろうか。この名作の劇場鑑賞を激推ししてくれたことに感謝したい。

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コウチャン