タンゴの後で

劇場公開日:2025年9月5日

解説・あらすじ

大胆な性描写と心理描写が大きな反響を呼んだ1972年のベルナルド・ベルトルッチ監督作「ラストタンゴ・イン・パリ」の舞台裏にあった出演女優の葛藤と怒りを描き、エンタテインメント業界における権力勾配や搾取といった問題に鋭く切り込んだドラマ。

19歳のマリア・シュナイダーは気鋭の若手監督ベルナルド・ベルトルッチと出会い、「ラストタンゴ・イン・パリ」への出演でまたたく間にトップスターに上りつめる。しかし48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンの撮影は彼女に強烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落とすことになる。

ベルトルッチ監督作「ドリーマーズ」でインターンとして働いた経験を持つジェシカ・パルーが監督を務め、マリアのいとこであるジャーナリストのバネッサ・シュナイダーの著作「あなたの名はマリア・シュナイダー:『悲劇の女優』の素顔」をもとに映画化。映画の撮影現場での問題について声をあげた最初の女性の1人であるシュナイダーの波乱に満ちた人生に焦点を当てて描き出す。

「あのこと」のアナマリア・バルトロメイが主人公マリアを演じ、マット・ディロンがマーロン・ブランド役で共演。

2024年製作/102分/PG12/フランス
原題または英題:Maria
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2025年9月5日

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2024 (C) LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT

映画レビュー

4.0 不都合な過去に向き合う劇映画が、社会の想像力と共感性をはぐくむ

2025年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

映画業界をはじめとする華やかなエンタメやメディアの世界で絶大な権力と影響力を手にした男性の成功者が、社会的な経験や知識が少なく立場も弱い若い女性(や未成年男性)に性的な行為を強要したり、直接的な加害でなくとも精神的なダメージを及ぼす不適切な働きかけをしたりといったことが、洋の東西を問わず半世紀以上にわたり繰り返され、それを知る関係者がいる場合でもたいてい黙認されてきた。そうした悪弊の流れを変えたのが、2017年10月にニューヨーク・タイムズが映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる性的虐待を告発した記事と、それをきっかけにSNSを中心に広がった#MeToo運動だった。

運動の盛り上がりを受け、欧米の映画業界では不都合な過去に向き合い、実話をベースにして事件の真相や被害者の内面に迫ろうとする劇映画を作るようになってきた。先述のワインスタインの事件を題材にしたものでは「アシスタント」(米2020)と「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」(米2022)。ほかに、米FOXニュースの女性キャスターがCEOをセクハラで提訴した騒動を扱った「スキャンダル」(カナダ・米2019)、フランスの50過ぎの著名作家と14歳の時に性的関係を持った文学少女が後年発表した告発本に基づく「コンセント 同意」(仏・ベルギー2023)など。本作「タンゴの後で」もそうした流れに沿う一本だ。

ドキュメンタリーに比べて劇映画は、登場人物に感情移入して出来事を疑似体験するのにより適したフォーマットであることから、観客が被害者の心身のダメージを想像するのを促す効果が認められる。本作について挙げるなら、「ラストタンゴ・イン・パリ」のあるシーンの撮影で、ベルナルド・ベルトルッチ監督が主演のマーロン・ブランド(マット・ディロン)にもともと脚本になかった過激な性行為の演技を指示し、19歳の新人女優マリア・シュナイダーには具体的な変更内容を伏せたまま本番に臨んだ場面で、アナマリア・バルトロメイが演じるマリアの屈辱的な思いや、大勢の男女スタッフが見ているのに誰も何も言わないときの孤立感などが、まさに今自分が体験しているかのような痛ましさで迫ってくる。

過去の不祥事や不適切な出来事に向き合う劇映画が観客の想像力や共感性をはぐくみ、ひいては社会の想像力と共感性をはぐくむことにつながると信じたい。

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高森郁哉

未評価 見たかった「ベルトリッチの視点」

2025年10月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 1972年、ベルナルド・ベルトリッチ監督の『ラスト・タンゴ・イン・パリ』は嘗てない大胆な性描写で世界を揺るがしました。主演女優を務めたマリア・シュナイダーは本作で名声を得たのですが、この映画では、脚本にない性暴力場面を彼女に前もって何ら知らせる事もなくぶっつけ本番で撮られた事を彼女は後になって告発しました。急な撮影変更を事前に知っていたのは監督と相手役のマーロン・ブランドだけだったのです。その出来事を中心に描いた物語です。

 日本の映画界でも嘗ては、女優さんは「脱ぐ」ことで「女優魂」とか「熱演」「一皮むけた」などと称揚されました。僕も以前は確かにそう思っていました。ただそれは単なるスケベ心の裏返しに過ぎないんですけどね。でも、男性俳優がスッポンポンになったって「男優魂」「熱演」と言われる事は確かにありません。そこには明らかに映画界の性差別があったのです。性的な場面の撮影に当たってはインティマシー・コーディネーターが関わる様になって来た近年は、緩やかにではあるけれど確かに進歩したのでしょう。

 ただ、当時のそうした歪んだ価値観を物語にするのならば、ベルトリッチ自身の視線を作中でもっと描くべきだったと思います。だまし討ちの様なその撮影を当時のそして後の彼はどう考えていたのかが映像化してあれば、表現活動が持ついかがわしさという一面と矛盾をもっと強く打ち出せたのではなかったでしょうか。

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La Strada

3.0 途中寝落ち

2025年10月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

カワイイ

していたので、滅多な事は言えないが。作品上でレイプに関わった三者を“演じる”という建付けが、皮肉と言うか・・。
今だに顔色が変わる程のトラウマを初仕事で植え付けられた、何とも言いようがない。MちゃんやNくんの現在は、あるべき末路なんだろう。
清原果耶似〜!ふわふわを着ていた時架かった曲とかトーキングヘッズとか、音楽はハマらなかった。

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共感した! 3件)
トミー

4.0 恐い映画でした。アリア・シュナイダーの恐怖を追体験します。

2025年9月28日
Androidアプリから投稿

19才のマリア・シュナイダーは映画の撮影で騙し討ちで裸にされる。映画は騒動となり彼女も偏見を持たれる。

本作は問題シーンを撮影している監督やスタッフを映すことで映画業界における異常さ、芸術の名の下であれば性的暴力は許されるのか?と映画は問いかける。

女優が受けた傷・トラウマの残酷さ。長い時を経て「性暴力はNo!」と実名で声を上げて、その後のMeToo運動に繋がった。

ジャーナリストであるマリアの従妹、ヴァネッサ・シュナイダーの回想録『あなたの名はマリア・シュナイダー:「悲劇の女優」の素顔』が元になっている。言わばマリアの苦しみを側で見ていた従妹による証言なのでリアルである。

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