大統領暗殺裁判 16日間の真実

劇場公開日:2025年8月22日

解説・あらすじ

1979年に韓国のパク・チョンヒ(朴正煕)大統領が中央情報部部長キム・ジェギュに暗殺された事件の裁判を中心に、1979年10月26日の大統領暗殺から同年12月12日の軍事クーデターに至る一連の事件に巻き込まれた3人の男たちの姿を、史実に基づいて描いたサスペンス。

勝つためには手段を選ばない弁護士会のエースであるチョン・インフは、上官の命令によって大統領暗殺事件に関与した中央情報部(KCIA)部長の随行秘書官パク・テジュの弁護を引き受ける。軍人であるパク・テジュは、ひとりで軍法裁判にかけられ、最初の公判からわずか16日後に最終判決が下されることになっていた。しかし、この裁判は後に軍事クーデターを起こす巨大権力の中心人物、合同捜査団長チョン・サンドゥによって不正に操られていたことが明らかとなる。

ドラマ「賢い医師生活」のチョ・ジョンソクが主人公チョン・インフ役を担当。「パラサイト 半地下の家族」などに出演し、2023年12月に亡くなったイ・ソンギュンがパク・テジュ役を務め、本作が最後の作品になった。チョン・サンドゥ役は、ドラマ「梨泰院クラス」や「劇映画 孤独のグルメ」で知られるユ・ジェミョン。監督・脚本は「王になった男」のチュ・チャンミン。

2024年製作/124分/G/韓国
原題または英題:Land of Happiness
配給:ショウゲート
劇場公開日:2025年8月22日

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(C)2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. A

映画レビュー

3.579年という時代の空気を濃密に焼き付けた一作

2025年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

実話ベースのこの政治サスペンスを面白く観た。裁判と聞くとやや硬いイメージが伴うが、本作は決して膨大なセリフ量の密室劇の域には収まらず、被告の一人である軍人とその弁護人という特殊な立場と関係性を巧く生かしながら、韓国における1979年という極めて重要な時期の空気感を浮き彫りにする。本作ひとつで当時起こったあらゆる経緯を呑み込むのは困難だが、『KCIA 南山の部長』や『ソウルの春』と併せて味わうことで、点と線の理解はより深まるはず。いや、理解などという冷静なものではなく、観ながらまずこみ上げてくるのは、一人の男によって自由の灯火が吹き消されることへのやりきれない怒りだ。前述の2作に比べると規模は小さく、語り口もやや実直に思えるが、その分、物語の情熱と躍動感を担うジュンソク、揺るがぬ信念を秘めたソンギュン、すべての背後で不気味にうごめくジェミンという3者各々の存在感が強く見応えを残す一作である。

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牛津厚信

4.0キャストは地味めながら熱演が見応えあり。韓国現代史のパズルのピースがまた1つはまった感覚

2025年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

驚く

本作については当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的な事柄をいくつか書いてみたい。

評論では、「KCIA 南山の部長たち」と「ソウルの春」の橋渡しをするのが、「大統領暗殺裁判 16日間の真実」の内容だと書いた。「KCIA~」が1979年10月26日に朴正煕大統領が中央情報部部長キム・ジェギュに暗殺された事件を、そして「ソウルの春」が同年12月12日に当時国軍保安司令官の全斗煥が起こした粛軍クーデターを扱っている。政治家や軍人らの権力闘争と自由化を求める民衆運動などが複雑に入り組んだ韓国現代史をジグソーパズルにたとえるなら、先述の2作を鑑賞してからこの「大統領暗殺裁判」を観ると、パズルに欠けていたピースがぴたりとはまる感覚を味わっていただけるのではないか。

キャスト的にはやや地味かもしれない。「KCIA~」がイ・ビョンホン、「ソウルの春」がファン・ジョンミンといった具合に日本でも知られる大スターが出演していたし、同じ実話ベースの法廷物でも「弁護人」(2013年製作)はソン・ガンホが主演だった。それでも、被告の軍人パク・テジュを演じたイ・ソンギュンと、若手弁護士チョン・インフ役のチョ・ジョンソクの熱演は見応え十分。軍人としての矜持を貫くパク・テジュと、嘘の証言をさせてでも裁判に勝ちたい現実主義者のチョン・インフというまるで水と油のような2人が、互いの生き方や信念に影響を受けて少しずつ変化し、心の距離が近くなっていく展開もいい。

「ソウルの春」のレビューでは、「作り手側の激動の四半世紀をとらえ直して若い世代にも伝えていこうという思いから力作が生まれ、そうした思いが観客に共有されて大ヒットにつながり、興行的成功がまた新たな社会派映画の製作を後押しする好循環が続いているのだろうか」と書いた。この「大統領暗殺裁判」もそうだが、韓国現代史を扱う社会派映画が日本に届くたび、邦画業界はずいぶん遅れをとっていると痛感する。同様に70年代以降を振り返ると、政治であれば田中角栄、小泉純一郎、安倍晋三ら個性が際立った元首相たちや、38年ぶりに自民党政権からの政権交代につながった新党ブーム。国民的な関心事ならオイルショック、ロッキード事件、リクルート事件、オウム真理教事件など。これらを真正面から描く劇映画がコンスタントに作られるようになればと切望するが、当分ははかない夢だろうか。

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高森 郁哉

3.5泣かせる系の話だった

2025年8月28日
Androidアプリから投稿

面白かったけど
物語の大前提である当時の韓国の情勢に疎いので

いまいち物語に入り込めなかったので
泣きはしなかったけど

入り込めたら
多分ラスト近辺で多分泣いたんだろうな

事実を元にしたフィクションらしいけど
どこまでがフィクションなのやら

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龍神

4.0あの時代のピースがまた1つ埋まった感覚

2025年8月28日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

1979年後半から1980年5月までの韓国は激動の1年だった。軍事独裁を続けていた大統領が暗殺され、新たな軍部がクーデターを起こし、それに反抗して立ち上がった民衆が新たな軍事政権に虐殺される。本作は、そんな1979年に起こった大統領暗殺に関わった軍人の裁判を映画化したもの。
ずいぶんと狭いところを狙ってきたなという印象だったが、ちゃんと見ごたえはあった。大統領暗殺に関わった人間は複数いたが、このパク大佐だけが軍人。だから、1人だけ軍事裁判にかけられるという歪な裁判だった。長いこと軍事独裁政権を担ってきた大統領が暗殺されたから世間的には歓迎ムード。でも、新しい軍部強硬派がすでに台頭しているという流れ。だから暗殺に関わった人間を英雄化することは避けたいということだ。弁護団に対する妨害工作も激しくなっていく。観ているこちらは軍部の強硬派に対する怒りや憤りが高まっていくばかりだ。法廷劇ではあるが、法廷劇っぽくはないのは軍のそんな姿を描いているからかもしれない。
本作を観て強く感じるは軍隊のメンタリティへの違和感だ。裁かれる大佐の意固地さ、再度クーデターを試みる強硬派の歪んだ正義感や権力欲、どちらも理解ができない。そんな中、主人公の弁護士の行動に驚いた。当初かなり強気な態度だったのが、最後の最後に全斗煥(役名は違うけど)相手にあんなことするなんて。自分だったらそんな行動をとることができるだろうか。他の人にはどう映ったかわからないが、自分はとてもカッコいいと思った。さすが、あのお父さんの息子だよ!と。
ただ、歴史的事実を元に描かれている物語なので、スッキリする終わり方ではない。でも、あの時代の歴史のピースが一つ埋まる感覚があった。男の友情が描かれたという意味でも、あの時代の暗部が描かれたという意味でもいい映画だった。

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kenshuchu