劇場公開日 1984年5月12日

「男と女の暴走愛憎劇」クリスティーン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5男と女の暴走愛憎劇

2019年3月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

単純

興奮

スティーヴン・キング×ジョン・カーペンター!
ホラー小説の帝王とホラー映画の鬼才のタッグによる、超一級のホラー!
…ではなく、B級テイストなのが何だかこの2人のホラー・マスターらしい。

学校ではいじめられ、家ではママが厳しく。
冴えない高校生、アーニー。
アメフトの花形選手の友人デニスにいつも助けられてばかり。
ある日、オンボロ同然の古車を購入し…。

とにかく内気で、如何にもな童貞くんで、ドン引くくらいダサかったアーニー。
車をピカピカのカッコイイ新車のように修理して自信が付いたのか、自身も変わっていく。
眼鏡を外し、オシャレな服を着て、彼女も出来て…。
男はカッコイイ車に乗ると、こうも変わるものなのか。

ところが、いじめっこグループに車をメチャメチャに壊されてしまう。
そして、それは起こった。
車は一人でに修復。いじめっこグループに復讐を開始する。
車は、意思を持った殺人車であった…!

車が一人でに修復していくシーンは、見事な撮り方もさることながら、本当に生きているかのよう。
車体を壊しながら、車体を燃やしながら、襲い来るシーンはなかなか恐ろしい。
襲い来る前に必ずカーラジオから流れる懐メロさえ、どんどん不気味に聞こえてくる。

車を大事にする人は世の中に溢れんばかりに居るが、アーニーの場合はちょっと…いや、異常。
勿論車の呪われた何かのせいでもあるが、身も心も奪われたかのように取り憑かれていく。
“クリスティーン”と名付け、まるで恋人を愛でるかのように。
自信が付き、イカした男になっていく…とは語弊。
傲慢で、ズバリ、ヤな奴に変わっていく。(演者の演じ分けも見事)
元々、アーニーの中に溜まっていたのだろう。
いじめ、束縛、劣等感、不満、鬱憤、憎しみ…。
それらがアクセルを噴かし、遂に暴走した…!
ジャンル的にはB級かもしれないが、しっかりと人の心の闇を描いている。
その末路は…、後味悪し。

また、同時に本作は、男女の愛憎劇でもある。
男(アーニー)は現カノ(クリスティーン)を異常なまでに愛している。現カノは元カノ(リー)に敵意剥き出し。
ひょっとしたら一番怖いのは、このドロドロ関係かも。

原作とは大分脚色されているらしいが、主人公青年の復讐と殺人車に焦点を絞り、巧く纏められていると思う。

近大