ヘルボーイ ザ・クルキッドマン : 映画評論・批評
2025年7月1日更新
2025年7月4日より新宿バルト9ほかにてロードショー
今度のヘルボーイは村ホラー? シリーズ第4作は最も原作に忠実と作者も太鼓判
世界中で根強いファンを持つマイク・ミニョーラ原作のアメコミ・ヒーロー、その実写版シリーズ第4弾。北米地区では劇場公開はされず、昨年10月に配信ストレートとなった。監督はブライアン・テイラー。ヘルボーイは新たにジャック・ケシーを起用。事件の鍵を握る男トムにジェファーソン・ホワイト、BPRD(超常現象調査防衛局)エージェントのジョー役に「モータルコンバット」続編への出演が決まったアデライン・ルドルフ。
1959年、アパラチア山脈で搬送中に逃走した怪物を追うヘルボーイと同僚のジョーは、とある村にたどり着く。そこは住民たちが魔女に悩まされているコミュニティだった。そこでヘルボーイたちは魔法をよく知る男トムと出会い、捜索の手がかりを求めて共に山の奥深くへと踏み込んで行く。

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2004年の「ヘルボーイ(2004)」はその思春期的な感性に若干戸惑ったものの、ロン・パールマン扮する主人公の完成度には目を見張るものがあった。続く2作目の「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」は監督のモンスター愛とチーム感が、スケールアップした物語の中で見事に機能していた。シリーズは順調(2本で世界興行収入2.7億ドル)で、IPとしてもジャンルの重要な一角を担うまでになった。しかし19年「ヘルボーイ」でのリブートが不調に終わり(製作費5000万ドル、世界興行収入5500万ドル)、ファンも気を揉んでいたところ、5年ぶりの新作がついに完成した。
ミニョーラは今回も脚本とプロデュースで参加しているが、インタビュー記事によると「デル・トロ版は私が完全に望むものではなかったので、複雑な感情を抱いていた」そうだが、今回は原作寄りに振り切ったことで「見ていて興奮した」と語っている。確かに従来のファンタジーやアクション色は控えめで、コミックが持つ不気味でホラーな要素を強めた仕上がりになっている。
シリーズはこれまで、強大な敵と人類の存亡をかけ、歴史を塗り替えるような戦いを繰り広げてきたが、それに比べると本作はかなり小規模な、登場人物たちの内面に迫った内容に仕上がっている。それは新たなアプローチによる独立した立ち位置を目指しているようだ。
これが映画とコミック双方のファンを満足させる作品なのかは未知数だが、原作に対して誠実で丁寧に作られたことは確かだ。不気味でミニマルな音楽と、ダークな色調の世界観に加え、今回も彼の出自の一端が明らかになる。いくつかのぎこちない演出があるものの、若き日のヘルボーイを見ることは大変楽しい経験になるだろう。
(本田敬)