コラテラル : 映画評論・批評
2004年10月16日更新
2004年10月30日より日劇1ほか全国東宝洋画系にてロードショー
トム・クルーズが、これまでになかった「男」になっているが…
5人の殺しを依頼されてロサンゼルスに降り立ったプロの殺し屋ビンセントと、高額チップに騙されて彼に雇われ、殺しにつき合わされるハメになるタクシー運転手のマックス。タクシーという小さな箱船でロサンゼルスの夜をクルージングし、大都会の闇に潜む野生の匂いに運命を狂わされていく。いかにもマイケル・マン好みのストーリーがクールだ。タクシーのボディの赤、車窓に映る街の灯り、青白く浮かびあがる車内の2人の顔。夜を流れていく色も、夜そのものの色も、闇が降らせた露に濡れたようにしっとりしている。デジタル・カメラによる撮影が美しい。
そしてトム・クルーズがカッコいいのである。いつも一生懸命の演技で暑苦しい彼も、マイケル・マンの腕にかかると、たっぷりの自信の裏にダークな狂気を隠し持った男に見えなくもない。とにかく、これまでにはなかった「男」になっているのだから、やっぱり、監督は選べってことなのだ。殺し屋の肉体的スキルに関しては、走る、構える、撃つ、どれをとっても完璧で惚れ惚れする。ところがその上出来のトムの一歩先に出てしまったのが、マックス役のジェイミー・フォックス。オスカー候補間違いなしと見た。
(森山京子)