「本作が投げかける問い」リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界 ぱんちょさんの映画レビュー(感想・評価)
本作が投げかける問い
試写会にて。
第二次大戦に従軍したおそらく世界初の女性戦場カメラマンであり、「シビルウォー」の主人公リーのインスパイア元ともいわれる、元々モデルで後に写真家となったリー・ミラーをケイト・ウィンスレットが演じる。
これはねぇ…素晴らしい映画でしたけど、食らいますから覚悟が必要です。劇中でリーは「ある日気付いたら戦争になってた。でも何故だか分からないが行かなくちゃいけない気がする」的なことを言ってヨーロッパに向かう。かなり無理して向かう。戦場は女性を閉めだしているから。
そしてそこでリーが体験するのはまさに「地獄の黙示録」もかくや、という地獄巡り。ただ、最後に目撃するのはカーツ大佐ではなく強制収容所でありそこへ向かう列車に満載された死体でありヒトラーのバスタブである。そして彼女は常に女性の視点を忘れない。
そこから導かれる本作のテーマ。
目撃すること。報道すること。目撃し続けること。報道し続けること。伝えること。伝え続けること。被写体に想いを馳せること。被写体への想いを忘れないこと。
アウシュビッツ、ダッハウ。ガザ、ウクライナ、南京。
文化大革命、ポル・ポト、光州。全部繋がってんじゃん。
リーがこれほど明らかに伝えてくれてるのに、何故我々は同じ過ちを繰り返すのか?何故我々は学べないのか?
トランプとヒトラーがいかほど違うというのか?
本作が投げかける問いは重く、辛い。しかし我々は向き合う義務があるのだと思う、同時代人として。
やっとの二回目で追加。
リーが何故自身で戦地に行かなくてはならないと思ったのか、について。
戦前から開戦後にはより強くなった男性優位の理屈。つまり、力による勝利に基づく正義。そしてそれに引きずられざるを得ない弱い存在(女性や子供)に対する違和感がそこにはあったのではないか。
そして彼女はもっと絶対的な正義を求めていたのではないか、と思った。
力による正義というロジックが今まさにガザを殲滅しようとしているからこそリーの物語が必要なのだと思った…
取材ソースが報道に載る迄、一段階在るのが怖いですね。今ではフェイクニュースだと言い立てるだけで、一部は信じてしまいますからね。保存の重要性もちょっと描かれてましたね。