啓示のレビュー・感想・評価
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観終わってゾッとした映画
「啓示(けいじ)」とは、神や超越的な存在が人間に真理や神秘を明らかに示すことを意味します。
怖いけど見応えのある映画でした。字幕版、吹替版で2回続けて一気に観てしまいました。2回観終わっても、ラストに留置所で神に見える壁の絵を擦ったら悪魔になった時のソン牧師(リュ・ジュンヨル)の感情が分からない。だって笑ってたもん…🙄きっと反省はしてないよね。それ一番怖いよね。悪いことしたのに悪いことしたって自覚ないんだもん。それとは対照的に、警察官のイ刑事(シン・ヒョンビン)は最後の最後に悪魔の囁きに打ち勝ちました。諦めずにシン・アヨンを助けて、きっと妹の悪夢からは解放されたんだろうな。終始両手で顔を覆った指の間からうっすらと観ていたい、そんな気持ちにさせる映画でございました。
人は判断に迷った時、最後に神任せにすることが往々にしてあります。しかし神任せといいながらも聞く前から答えが決まっている事が大半。なぜなら人は自分が見たいように目の前の世界を作り上げるからです。
神の啓示=自分のエゴ
だとしたら、
一体どうしたら本当に正しい選択ができるのだろう?
心の中の悪魔はそっとつぶやいた
神の啓示
倒叙法のような始まり
物語は、一見、倒叙法のように始まる。
観客は、既に事件が起こった後の世界に放り込まれ、
徐々に真相へと導かれていく。
この手法は、『刑事コロンボ』や、
アガサ・クリスティの『アクロイド殺人事件』、
ドストエフスキーの『罪と罰』など、
古典的な名作群を彷彿とさせる。
また、韓国映画が得意とする「セカイ系」のアプローチも色濃く反映されている。
個人と神の領域が直接的に交錯し、
正義と「正義」の間に横たわる深い葛藤を描く。
主人公である神父の人物像は、非常に複雑だ。
彼は一見、信仰に基づいて理性を持ち合わせているように見えながら、
その内面には弱さ、迷い、そして時には残酷ささえ垣間見える、
彼の強さと弱さの間を行き来するその心理描写の演出も巧みだ。
同様に、警察官として登場するキャラクターも、
非常に興味深い。
彼女は警察官としての職務に忠実でありながら、
姉としての感情に揺れ動き、
自己の正義と家族との間で葛藤する。
彼女の行動は、正義と〈正義〉いうテーマを一層際立たせ、
観客にその葛藤の重さをしっかりと感じさせる。
正義というものが、時にどれほど個人的で曖昧なものであるかを、
彼女を通じて強く印象づけられる。
さらに、偶然と必然が交錯する中で、
「怪物」とは何か、
神とは何か、
そして「自分」という存在が何を意味するのかという形而上的なテーマが絡み合っていく。
これらの形而上的な抽象的な概念が、
物語の進行と共に具現化され、
地上に引きずりおろされてアクションシーンと融合していく。
その結果、深遠な哲学的な問いが、
視覚的に、かつ感情的に強烈に表現される。
映画全体を通して、シナリオ、演出、芝居は見事に調和しており、
それぞれが相乗効果を生み出している。
物語の深みと緊張感、そしてキャラクターの心情の揺れ動きが、観る者を圧倒する。
『啓示』は、単なるエンターテインメントにとどまらず、
人間の内面に迫り、観客に強い印象を残す作品だ。
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