「光州事件を描いてもいい映画になるとは限らない」1980 僕たちの光州事件 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
光州事件を描いてもいい映画になるとは限らない
光州事件を題材にした映画となると、やはり「タクシー運転手」を思い浮かべてしまう。それくらいにいい映画だった。だから、同じ題材を扱った映画となると、どうしても比べてしまって評価基準が厳しくなる。
そうだとしてもちょっとひどかった。舞台として映し出されるのは、中華料理店(といってもほぼジャージャー麺屋だけど)周辺だけ。街中や国全体の状況は、ドキュメンタリーのような過去の映像や画像に頼るだけ。あのお店の家族に起こる悲劇がメインになるのは仕方ないとは思うが、あまりにも唐突だし説明不足感が拭えない。ものすごい悲劇なのにこれでは気持ちがついていかないよ。少しは泣いてしまうかもと事前にしていた心の準備が全くの無駄になってしまった。
軍人や学生、活動家の描き方もステレオタイプでちょっと嫌な感じ。そもそも隣人に軍人家族を設定するあたりも気に入らない。話の展開でもいろいろと気になることが多い。ピエロの格好していた長男のことを誰も気づかないのか?とか。まだ結婚していない女性なのに、なぜ夫になる予定の家族が喪主になって葬式するんだ?彼女の両親はどうした?とか。なぜ隣人の夫(軍人)は家族をもっと安全な場所に移動させないのか?とか。あの子どもたちのくだりも個人的には余計だった気がする。最後の方はやはり悲劇的な結末が待っているのだが、その描き方もかなり雑だった。
とても悲劇的な事件を題材にしても必ずしもいい映画になるとは限らないということだ。
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