「古典のリメイクとしては上出来だが、オカルトホラーとしては物足りない」ノスフェラトゥ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
古典のリメイクとしては上出来だが、オカルトホラーとしては物足りない
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モノクロとカラーの画面を巧みに切り替えることによって作り出された陰影に富んだ映像と、怪奇映画らしい幻想的でオドロオドロしい雰囲気は存分に楽しめる。
ただし、堪能できるのは「雰囲気」だけで、まったくと言っていいほど「恐怖」を感じることができなかったのは、オカルトホラーとして致命的だろう。
そもそも、グロテスクな老人然としているノスフェラトゥには、女性を惑わす「魔人」としての魅力がないし、悪夢を見させたり、催眠術のような能力で人を操ったり、ネズミを使ってペストを流行らせたりするだけで、どうやってもコイツは倒せないと思わせるような手ごわさが感じられないのは、物足りないとしか言いようがない。
結局、ヒロインが、自ら進んでノスフェラトゥを受け入れなければならなかったのであれば、彼女の夫が、遠路はるばる契約を結びに行く必要はなかったのではないかとも思えてしまう。
ヒロインが、自己を犠牲にしてノスフェラトゥを滅ぼすラストにしても、元々、ノスフェラトゥを長い眠りから呼び覚ましたのは彼女だし、自分で蒔いた種を、自分で刈り取っただけなので、それほど評価されることのようにも思えない。
何よりも気の毒なのは、主人公の夫婦を献身的に支えてくれた友人の夫婦とその子供たちで、一家4人が全滅の憂き目に遭うというのは、余りにも救いがないし、その必要性はあったのだろうかという疑問も残る。
古典を現代に蘇らせることには、それなりの意義があるのだろうが、その上で、現代の観客を満足させることの「限界」のようなものも感じてしまった一作であった。
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