「素晴らしい」パディントン 消えた黄金郷の秘密 【映画評論家】潮田映介さんの映画レビュー(感想・評価)
素晴らしい
パディントンが帰ってきた。あの礼儀正しくて心優しいクマが、今作では「黄金郷」というロマン溢れる謎に挑む。シリーズ第3弾となる本作『パディントン 消えた黄金郷の秘密』は、ファミリー映画としての愛らしさと、アドベンチャー映画としての骨太さを両立した、極めて完成度の高い一本だ。
物語は、ペルーの叔母・ルーシーの誕生日を祝うべく、彼女のかつての夢を叶えるため、パディントンが黄金郷の手がかりを求めて南米へ旅立つところから始まる。舞台がロンドンから離れ、ジャングルや神殿といった冒険色の強いロケーションに移ったことで、シリーズに新たな風が吹き込まれている。
それでも変わらないのは、パディントンの「思いやり」が中心にあることだ。彼が示す無償の優しさが、周囲の人々の心を少しずつ変えていく様子は、現代社会が忘れかけている“善意の連鎖”を鮮やかに描いてみせる。
演出面では、英国コメディの品の良さと、チャップリン的なフィジカルギャグが絶妙に融合。列車でのアクションや水中シーンの緻密な映像美も、実写とCGのシームレスな融合によって感嘆すべき仕上がりだ。
声優を務めるベン・ウィショーは今作でも安定の演技。彼の声には、純粋さとウィットが同居しており、パディントンというキャラクターをただの「かわいいクマ」ではなく、知性と道徳心を持った存在に昇華させている。
本作が教えてくれるのは、「信じることの力」だ。それは未知の土地への冒険であり、誰かの夢を叶えようとする勇気でもある。大人にも刺さるこのメッセージが、パディントン映画を単なる児童向け作品から、世代を超えて愛される作品へと押し上げている所以だろう。
シリーズの集大成とも言える本作。観終えた後、心が少しだけ温かく、そして優しくなる。そんな映画体験が、今の私たちには何より必要だと感じさせられる。
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