「細田守の脳内で成立している物語のベストシーンだけをハイライトしてかき集めたことで出来上がった作品」果てしなきスカーレット ももん太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
細田守の脳内で成立している物語のベストシーンだけをハイライトしてかき集めたことで出来上がった作品
監督の頭の中で成立している最高の作品のおいしい所だけをかいつまんで映像化することで完成した作品という印象。
見る側としては細田守の頭の中に存在するその物語の細かい部分については知らない為、映画を見ても説明が足りなさ過ぎて面白さが全く分からない。
良い所
・映像が綺麗、想像していたよりもCGの技術が進化していることを感じられる。
ゲームで褒めるところが無くてグラフィックが綺麗っていうのと似ている。
・バトルシーンの殺陣がそこそこ見れる。
引きのカメラ多いという意見も良く見るけど不満に思うほどではない
・スカーレットのキャラクターデザイン
・聖の看護師になった理由が痛すぎる
「現実の辛さは当然知ってるけど、それでも無謀に人助けたいと思えちゃうよ俺は」みたいな誠実な男を演出したいのか分からないけど、「現場でボロ雑巾みたいに働いてる看護師をみて、俺もなりたいと思った」は痛すぎて笑った。いい意味でキモい。こんな奴いたら面白すぎる。「とりあえず金稼げる職業につきたかったんで」って言うような奴のほうがよっぽど正直で自分を許せてるいい奴だよ、まじで。
個人的に思った絶対にやっちゃダメでしょポイント
・死後の世界に復讐相手がいる理由の描写が一切無いし、明かさないことの利点もない
最終盤に死後の世界にいた理由について、自分で服毒して死んじゃいましたと簡単に明かされていたがそれをスカーレットが死後の世界に行く段階のどこかで描写しておかないと復讐相手にはめられて死んだのに、なぜかその死後の世界に復讐相手が既にいるという不可解な展開の飛び方をしており話の展開に置いていかれるような進み方をする。
まずここの説明がないのは映画として不親切すぎる、話の根幹を描く前の土台レベルの話を省くせいで違和感しかないし、わざわざ考える様な場面でもないところで頭を使わされる
さらに死んだ理由が後付け、帳尻合わせすぎる。
配下の4人も死んでる理由が訳わからないしその時点で復讐成功してんじゃねぇかとも言いたいし、反乱に会って死んだとか、死後の世界にいる婆にそそのかされて死後の世界にある何かを求めて自ら服毒したとか、ありきたりな理由でいいのに無駄に凝った答えを用意しようとして誤って服毒したとかいう一番しょうもない中身のない回答になっている。
ここの描写があまりにも足りないせいで、なぜかスカーレットよりも時系列敵に後に死んでるはずのクローディアスが先に死後の世界におり、城砦を気づいているという展開が疑問として残って非常に見づらい。
・作中、頑なに殺人を反対してきた聖が人を殺しちゃう
死後の世界という奪い合い、殺し合いが当たり前の世界で唯一皆が心の奥底で願う平和を実行し続けるという善性のキャラクターである聖が人殺しちゃったらもう作品の本題どこにあるのかと。
その人を殺す流れもスカーレットが捕まったのを助ける為にあれだけ頑なに殺しはダメだと否定してきた割りにあっさりと葛藤も少な目で殺しを解禁するって完全にヤリ目でしかないし、ヤリ目でなくてもお前らはダメ、自分は良いのダブスタに映るから印象は良くないし確実に必要のない描写、だったらこいつらもドラゴンが焼いてくれた方が良かったよ
・起伏の無いストーリー展開
スカーレットの聞き分けが良すぎる。
愛する父親を殺されて、さらにその復讐まで失敗に終わり無念を晴らすために燃えているのに聖に人殺しを咎められたらすぐに制圧に切り替える聞き分けの良さが凄い。吸収力の鬼。
敵に会うたびに何か1つ順調に会心していくからストーリーに裏切りがない。
用意された道を順番に辿って順番に何かを得ていくだけの平坦な道で映画でわざわざ見る様な話じゃなくなっている。
途中まで緩やかな上り坂をゆっくり上り続けて、全く中途半端な盛り上がりぐらいのところで、この映画の大山場ですとでも言いたげに時渡りダンスシーンにはいられても盛り上がれない。
・結局、復讐したい相手は自分以外の誰かが殺す為、「復讐は自分の為にならない」という作品全体で伝えてきたメッセージが薄すぎる。
そりゃ、自分の手を汚さずして復讐したい相手が誰かに殺されて、自分の目の前で惨たらしい仕打ちを受けて、自分に命乞いしながら朽ちていくのを合法的に眺められるなら誰も復讐なんてしねぇよ。
+聖がすべてが終わった後の何も生産性のないタイミングで死ぬ
だったら最後クローディアスを断罪する前か、四天王の2人を倒す段階くらいで聖を殺して、スカーレットが復讐をしない道を選んだ事を後悔するシーンを作ってから、最後再び立ち上がってそれでもなお復讐をしない道を選ぶシーンとか作る方が良かったと思う
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シュールで面白かったシーン
・父親の遺言の意味を考えるディベート大会シーン
父親の遺言についてどういう意味なのかを大人3人で考察する謎の討論会が始まる。そして一番肝心な理由については触れられずに進むからむずがゆいし、あまりにも実はあの時の言葉はこういう意味だったのか!??を演出したすぎている
・スカーレットを二手に挟んで優位を得た槍兵が槍を抱えてエッホエッホしてたら不意を突かれて殺されるシーン
敵を前にして隙を晒しすぎで愉快すぎて面白い
・焚き火の火を見てたら未来の世界へ時渡りしちゃうシーン、時渡りするまでが長すぎる。
30秒くらいかけてワームホールを右へ左へ進むシーンが続く、どこに尺割いてるねん
・未来の世界から元の世界へ帰る時の時渡りが短い
行きは長くて帰りは短い、旅行帰りかよ
・聖の死んだ理由なんか気にしてもしょうがないのに違和感だけ感じさせる問題
わりかし遠くにいる包丁を持った通り魔から、そいつが狙ってるのかも分からない小学生達の代わりに刺されて死んだという描写。君の膵臓を食べたいとかそういう感じの描写だけどいざ映像化すると子供-聖-通り魔の距離間に不用意な違和感がでる、映像のプロであればこういうところの違和感まで凝って欲しかった。だったらボールを取りに道路に飛び出た小学生守るためにトラックに突っ込んだとかのありきたりofありきたりの偶然の事故で死んだほうがいいよほんと。
死後の世界に通り魔が出てきて、自分を殺した相手ですらも許すとかそういう展開もやらないんだったら不慮の事故でよかったよ。
結論
大真面目に見る様な映画ではない、シュールギャグとして見に行くとお値段分は楽しめるか。
世間が言うほど叩くような作品ではないが、擁護するほど面白くもない。
感動映画としては、味のしないガム。ミュージカル映画としてはB級。シュールギャグとしては及第点。
「ボロ雑巾」というワードチョイスが…
叔父が先にいることは、一応「過去も未来も混ざり合う世界」で説明はされてますが、何でもアリのご都合設定。
最後に未来を変えることにも言及してけど、それ出来ちゃうと並行世界まで絡んであの世界グッチャグチャになりそう。
殺陣は園村健介&伊澤彩織で素晴らしかったけど、クライマックスにアクション無いんですよね。笑
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