「「大衆に迎合しない」宣言」果てしなきスカーレット まーちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
「大衆に迎合しない」宣言
観た直後にはっきりとした感想を抱いたのですがもやもやが止まらず、ネットに溢れるたくさんの意見を見まくり、様々な思考を経て最終的な自分の結論が出ました。
そういう意味で余韻が長い作品です。
今も考え続けています。
<私の状況>
演劇業界の住人。
細田監督の作品は「時をかける少女」の大ファン。
子供を連れて「サマーウォーズ」を見て、家族で感動しました。
その後、映画から離れたため、テレビで「バケモノの子」を観たくらいです。
<観た直後>
「エンターテイメントしていない」
「脚本が酷い」
観た直後に真っ先に想ったのがこれでした。
脚本が悪いとその後どんなに頑張っても取り返しがつきません。
何が酷いと思ったのかというと・・・
①どのキャラクターも背景や思考の深みがなく、とても薄い。
②スカーレットのいる時代を16世紀北欧としているのに、その時代らしさを全く感じない。
王・貴族・兵隊・民衆など全ての人の発言・行動全てが現代的。
③「死者の国」に暮らす人々の感情が見えてこない。
自分が死んだこと、そして更なる死に当たる「虚無」をどう捉え恐れているかわからない。
④「死者の国」にいる人々に多様性(国・時代・考え方)がなく、時代や国を超えている感じが全くしない。
⑤博愛者である聖が弓で人を殺し、全く動じないのはなぜ?
⑥神のような存在である龍の存在理由が全く見えなかった。
⑦ずっと暗いシーンが続き暗鬱なのに、突如明るいシーンが入り、それがちょうど1時間。演出的都合を感じた。
⑧「果てしなき」を全く感じなかった。
他にもたくさんあり、枚挙に暇がない。
映像に力があるため退屈はしないが、観ている最中、謎で一杯。。
多くの観客が求めていたのは、「時をかける少女」「サマーウォーズ」のような、多くの人が楽しめるエンターテイメント作品。
しかし観たのは、謎がいっぱいで多くの人がついていけない作品でした。
<面白さがわからなくてネットを彷徨った>
初めは酷評ばかりでした。
酷評の理由はやはり「わからない」が多数。
その後、ネットの常の「揺り返し」がきて「擁護論」に溢れました。
擁護派の主たる言葉は「ハムレット」と「画力」。
私が気になった「脚本」はどの人も「置いといて」でした。
なので読めど読めど納得がいきませんでした。
その後出てきたのは「私は好き」。
これは逆に理解できます。
結局観た人が好きか嫌いかです。
言葉苦しく擁護するより、こちらの方が理解できます。
これが現在地です。
<結論>
各々の好き嫌いはあってしかるべき。
「大衆に向けた作品を作ってきた細田監督が、自分の言葉で少数に向けた作品を作り始めた」
というのが私の結論でした。
巨匠になる前はエンターテイメントを強いられ、商業的に成功するために
〇原作が有名
〇流行の役者
〇提携するテレビ局の事情
など様々な制約が入り、その中であがくことになる。
そして、そこで成功した人のみがわが道を行く権利を得ることになる。
宮崎駿監督然り、庵野監督然り。
そして徐々に政治的思想や個人の嗜好を作品に反映させるようになり、作品が大衆にわかりづらくなる。
細田監督もそうなっていくのだな・・・というのが私の結論です。
今後も大衆に迎合しない、独自の作品を作っていくと思う。
観客はそれを好き嫌いで観に行くようになる。
その先にあるものが何かを見届けていくのだな・・・と強く思いました。
「エンターテイメントから離れた」
勿論、結論は人によって違い、それでよいです。
これまでのように皆で楽しさを共有できない・・・それを受け入れたことによって、私の迷いが消えました。
これで劇評を彷徨わなくて済みます。
様々なことを考えた、余韻の長い作品でした。
余韻が長いということは、作品を楽しむ時間が長かったということでもあります。
どうもありがとうございました。
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