「確かに端正な造りではないけど、細田監督の挑戦には一定の評価をしたい一作」果てしなきスカーレット yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
確かに端正な造りではないけど、細田監督の挑戦には一定の評価をしたい一作
名作として名高い『サマーウォーズ』からして全く心に響くことがなく、それでも「次こそは感動できるかも!」と意気込んで劇場に足を運んでは、しょぼーんとして引き揚げる…、という細田作品遍歴遍歴を持つ観客による感想です。
結論から言うと本作は、今までの細田監督作品の中で、一番心動かされた作品となりました。
とは言っても、確かに世界観の説明は足りないし、唐突なダンスシーンは苦笑してしまうし、ご都合主義なところもなきにしもあらず…、と、言いたくなるところはわんさかありますが、それでも「生きるとは何か」という、まず答えの出ない、そして人類究極の問いに懸命に取り組み、何かをつかもうとした姿勢は作中一貫しており、そこに細田監督の、テーマに対する真摯な姿勢を感じました。
少なくとも、都合の良い設定をごてごて張り付けた登場人物に、お前が言うな的な説教をさせたり、主人公が登場しただけで、良からぬ行為を働いていた輩が取り乱して逃げ去る、といった、どこかの作品で見たような安直な展開は、全くない、とは言わないけどかなり抑制的であると感じました。一つの作品としていびつな部分が色々あるのは、細田監督の挑戦と苦闘の証、とひとまず受け取れる程度には、十分内容のある作品でした。
予告編でも明らかな、これまでの作品とは頭一つ抜けた感のある映像表現の品質を、冒頭から結末まで維持していること自体が既に驚異的で、この映像を観るだけでも、スクリーンで鑑賞する意義は十分にあると感じました。少なくとも酷評だけで済まして良い内容では全然ない作品です。
なお、死者が集うはずなのにみんな中世風のいでたちだったり、交易などの経済システムがある、といった世界設定は確かに分かりにくいのですが、ダークファンタジー系のゲーム、特に『ダークソウル』シリーズとか『エルデンリング』とかプレイした経験がある人であれば、ある程度はその世界観を了解しやすいかも。竜も出てくるし。最終盤に登場するあるギミックも似てるし。
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