「「仇討ち」に失敗した者への鎮魂と「立山信仰」」果てしなきスカーレット minavoさんの映画レビュー(感想・評価)
「仇討ち」に失敗した者への鎮魂と「立山信仰」
制作段階の紹介文に「仇討ち」って書いてあるの見て、完全にグローバル狙いだなと予想してたけど、想像以上だった。日本では理解されないかも知れないけど、世界からは絶賛されるのがわかる。細田監督、やりましたね。おめでとうございます。
「仇討ち」って書いてあってピンときたのは、覚えてないけど歴史小説の後書きに、「仇討ち」は誰でも彼でもやっていいわけじゃなくて、きちんと奉行所に届けて許可を得ないといけなくて、さらに失敗したらお家お取り潰しなどペナルティがある、むやみやたらにやられないようなシステムだったことと、逃げてるカタキを見つけるのも大変で、見つからない場合、戻れば失敗とみなされるし、見つけても相手が強いと返り討ちにあったりと、成功率がものすごく低いということだった。
細田監督が「仇討ち」というからには、この日本古来のエッセンスを入れてくるに違いないと踏んでいたというわけ。今更、「巌窟王」の焼き直しは絶対やってこないだろうと思ってた。
なので、仇討ちに失敗した者たちに対する鎮魂を描いてることは理解できた。憎しみに囚われる主人公に対し、現代日本の平和をみせ、時代に翻弄される運命の残酷さも伝わってきた。
すごかったのはここから。
われ先にユートピアに行こうと殺し合う人々。イスラエル、パレスチナの間にそびえるヨルダン川西岸地区の分離壁だ。(ヒジャブ姿の女性もいた)
険しい山での決闘は、たぶん監督の郷里、富山の剱岳だ。天国と地獄が共存する立山信仰がベースにあると思った。オババは阿弥陀如来だ。雷を落とすドラゴンは立山の水源の守り神、龍神だ。振り返ると、死の国に入ってすぐ見えたのは、賽の河原の積み石だ。間違いないだろう。
👉 立山信仰とは、富山県にある立山を神聖な霊山として崇める、山岳信仰の一種です。古代の神道と仏教が融合した「神仏習合」の信仰で、山の景観を地獄や極楽浄土になぞらえ、登拝を通じて死後の世界を疑似体験する「地獄と極楽の巡拝」という特徴があります。
富山県民は立山に対する思い入れがある。小学6年生の野外学習は、3000m級の立山の山頂を目指す。一人前と認められるための通過儀礼だ。一般の登山客が、大集団の半ズボンの小学生とすれ違う時に驚いた顔をする。何年かに一度、児童が滑落死する。しばらく自粛するがすぐに復活する。親も経験してるから何も言わない。東京からみたら考えられないことだ。
だから細田監督が、神曲がモチーフといいながら、立山信仰をさらっと混ぜ込んだ気持ちがわかる。
利己主義に走ったネタニヤフが倒れ、国民のために自己犠牲を厭わないと説く、女性総理、高市早苗さんがうまれる。
かりそめの平和を楽しむ日本にも、予想だにしない悪が存在する。だけど、自分の魂は自分にしか救えない。
分断より共存、死よりも生、憎悪より愛情。
国際社会に向けた力強いメッセージが伝わった。
連投失礼します。受け手にどう生きるのかと突きつけるているとは、感じませんでした。
私の言葉足らずでしたが、赦す事が答えの無い世界のキーで、それを目指して生きる事が答えなのかと。
だからスランブル交差点のダンスシーンも気にならなかったし、平和ボケを示唆してるのも感じています。
ただ作者の答えと思えた上記の事は、わかっているけど出来ないから人なんでしょ?ってレビューでした。
かぼさん
コメントありがとうございます。ボクは死の国が、イスラエルとか争いばかりしてる現在の世界でそれって地獄と同じだよと、日本だけは平和にダンスしてるよと、そんななかで、お前はどう生きていくの?と突きつけられるように感じたんですよね。で、そんなの答えがあるはずもないですよね。答えがないことが希望なんだと思います。
真逆の評価のレビューに共感とコメントありがとうございます。
答えの無い事が絶望ではなく希望にしようとしてるのは分かります。
きっとそれが監督の答えでしょう。
ただ私にはその答えを導くには、余りにも描写の詰めが甘く、散漫に感じました。
答え自体を偽善と言うのは傲慢だと思うので、作者の考えは飲み込めます。ただ生きたいと言う叫びが絶望の中の一筋の光となる様には、私には響きませんでした。
おつろくさん
コメントありがとうございます。レビューでは感情的にならないように書いてますが、酷評されてるスクランブル交差点ダンスは、平和ボケしてる日本をみせてると思って、泣いてしまいました。
わかんない人が多いのは日本人がホントに平和ボケしてるんだと思います。
共感ありがとうございます!
>制作段階の紹介文に「仇討ち」って書いてあるの見て、完全にグローバル狙いだなと予想してたけど、想像以上だった。
まさにその通り。minavoさんのような細田守教の信者(もちろん自分も)の存在がありがたく感じます。教祖が前作の「竜とそばかすの姫」から、児童虐待とSNSの陰と陽のような重いテーマを扱うようになって、世界戦略を視野に入れている事が予想できたので喜んでいたのですが、単純に面白さだけを追求しているアンチコメントが多くて辟易していました。
>われ先にユートピアに行こうと殺し合う姿は、イスラエル、パレスチナのよう。(絵の中にヒジャブ姿の女性もいた)
これもよく観察していないと気付きませんよね。他の人のレビューを読んでいても、スカーレットと聖が旅をしている間に出逢ったグループの中にフラダンスを踊るハワイの人がいる事にも気付かない人もいるので、あら探し目的で鑑賞しているんじゃないかと疑いたくなりました。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。


