「私は貝になりたいのか、虚無になりたいのか」果てしなきスカーレット 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)
私は貝になりたいのか、虚無になりたいのか
「風の谷のナウシカ」
ミラルパと云う人物がいます。超常の力を持つ一方、誰よりも死を恐れ、その臆病さが、多くのヒトを傷つけることになります。
彼は、誰に赦しを乞うべきだったの?
もうひとり。クシャナ。優れた統率力を持つ一方、血の繋がらない兄への復讐心から、多くのヒトを傷つけ、自らも、復讐される側に佇むことになります。
彼女は、恩讐の彼方に、何を見たの?。
さらに、ひとり。虚無。主人公のナウシカが、最も忌み嫌うものです。
何もない世界。当時の私は、虚無に溺れていました。何もなければ、誰も傷つけないし、私も傷つかないから。ところがここに、矛盾があります。何も存在しない世界とは、私の意志も願望もない世界。しかし、そんな世界を夢見る私の意識は、確実な存在。つまり、私は決して虚無ではない。そう思えるようになるまで、ずいぶん時間を費やしたものです。
今の私は、何を見ているの?。
「…人を殺してしまった。あの時、お前は撤退を決意した。オレは戦う決意をした。仕方なかった。仕方がなかったんだ。この村を守りたかったんだ。オレは正しかった。そうだろう?。」
「…お前は正しいと、言ったところで、お前の苦しみは無くならないんだ。俺も一緒に死者を背負うよ。俺にできることは、それだけだ…兄弟…。」
「…そうか…。やっと分かった。お前は今日まで『仕方ない』と、戦っていたんだな。『間違えているけど、仕方ない』、そういうものを、どこまで選ばすにいられるか…。すごいな。お前は、本当の戦士だ。」
幸村誠「ヴィンランド・サガ」
仕方ない…みんながそう思うと、ヒトは傷つけ合うそうです。仕方のない争いをする理由を探すヒトになるのか、争いをやめる方法を探すヒトになるのか?。皆様は、どちらを望みます?。
私、子供の頃、嫌なものには、敵意と憎悪の感情しか、持ってなかった。もし、それ以外の何かを見つけることができたら…
私達に、今よりマシな未来を描くことは、許されますか?。私達は傷つけ合わない世界を、用意できます?。それを誰かに、託すことはできますか?。
私達はどう生きるか、考えることは許されます?
皆様は、誰を赦しますか?。
私は私を…
追記)
いわゆる、観るヒトを選ぶ映画のようです。確かに、私に刺さっちゃった時点で、一般受けしないのかも。その一方で、家族の仇を討つためなら、無限のお城で、モブキャラの首を斬りまくる映画に魅入っている私も、いますけどね。
スカーレットに感情移入しづらいのは、見られたくない自分を、見させられるように感じるからかな。彼女、強いのか、弱いのか、正しいのか、間違っているのか、判然としないよね。迷わず一途に進む者に、ヒトは惹かれます。でもそれが出来ないからヒトであり、そこに、共感と反発が、派生するのかな。他者を見下すことで、自我を保とうとする方の気持ちは、分かります。私自身、そうだったから。聖くんへの反感が強いのも、同じ理由だよね。テーマが薄いとか、説教が先行しているという意見もありますが、その薄いテーマすら伝わらず、言葉の刃を振りかざす方々もいるようです。まぁ、虚無にかぶれていた頃の私なら、この映画に反発していたかもね。
誰も皆、満たされぬ時代のようです。それでも、生きていかざるを得ない。だからこそ、この映画が創られたのではないでしょうか。
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