劇場公開日 2025年11月21日

「没入感はあるも既視感も多い」果てしなきスカーレット asukari-yさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0 没入感はあるも既視感も多い

2025年11月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

単純

驚く

 4年ぶりの細田守監督による最新作。個人的には、現時点(2025年現在)
において間違いなく日本アニメ映画の先頭集団にいるアニメーターと思っています。過去作から見てもメッセージ性のある、また没入感のある作りは見応え十分。自分としては今の日本を引っ張る作家として本作を観ずにはいられない。また予告編から「今までと大きく方向性を変えた可能性がある」という期待と不安を持ちながら、本作の鑑賞に至ったわけですが・・・。

 いままで“家族”をテーマにしてきたイメージのある細田守監督、今回は“復讐の果てにあること”をテーマに据える方向転換には驚きでした。今までは冷たくも温かみと柔らかみのある作風が一転、烈火のような刺々しさをはらんだ雰囲気に戸惑いを覚えるも、さすが細田監督、没入感あるつくりは健在。おぞましさを感じつつ、しかし魅入ってしまう画作り、演出には今回も脱帽です。

 また、他方向のテーマとしては“許すということ”の解釈や、“絆の大切さ”と自分は思っているのだが、ここは細田監督らしいなと。今までの作品でも絆の強さを感じる作品は多かった。そこは形を変えても不変である、監督の芯みたいなものを感じる部分でもあった。

 しかし、

既視感の多い作りはどういうことか。

 まず世界観がどっかのRPGゲームに見えてしまうこと。てかストーリー展開がRPGゲームのように進んでいくので「おいっ」と思ってしまった。次に主人公のスカーレットが絶叫するシーンは「エヴァンゲリオン まごころをきみに」と重なってしまう。物語の途中、渋谷でみんなが躍っているシーンなんか、導入の仕方が古き名作「雨に唄えば」のブロードウェイ・メロディに、踊ってるシーンはThe Boomの「風になりたい」に見えてしかたがない。また、スカーレットがいる世界の人々の動きが芥川龍之介の名作「蜘蛛の糸」に似てはないか。いや、死しても飽くなき人間の欲望が渦巻くこの世界はまさに「蜘蛛の糸」の世界ではないか?

 芸術が誕生して何千年かは知らないが、多かれ少なかれ影響は受けるだろう。インスピレーションを得るのは問題ないし、作って結局どうしても似たようなものができてしまうのも致し方ない部分はある。しかしここまで既視感が多いと「うーん」と言わざるを得ない。新しさを感じないのが最大の欠点か。そういえば監督の前作も新しさは感じつつ「美女と野獣」のような作品ではあった。そのような既視感が連続でとなると、どうしても評価を高くつけることはできない。

 しかし、アクションやエンタメとしては確かに面白い。演出としては見ごたえあるし、観てて飽きはこなかった。見どころ多く楽しませる部分としてはポイントは高い。しかしそれでもラストシーンにはケチがつくなあ。もちっと何とかならんかったのか・・・。

 全体的には没入感ある面白つくりはしているも、どうしても既視感がぬぐえない、ちりばめられた“新しくない作品”に思ってしまう。だがアクションや世界観、演出は見応えたっぷりかつ現代人が忘れがちな絆をテーマにしてる部分から、点数は高くないにしても比較的良作な作品である。

asukari-y
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