「YouTubeのショート切り抜き動画で観れば充分です」果てしなきスカーレット ハイビスカスさんの映画レビュー(感想・評価)
YouTubeのショート切り抜き動画で観れば充分です
単純につまらなかった。
ストーリーが単調で奥行きもなく、そのクセ設定も徹頭徹尾ブレブレだから気持ちが悪かった。
ストーリー展開から設定、セリフ、キャラクター性に至るまで、そのほぼ全てが色んなアニメ漫画の使い回しで観ていて恥ずかしかった。
まさに進研ゼミの漫画の「これ、ゼミでやったヤツだ!」を彷彿とさせられた。
特にラスト、スカーレットと聖との別れ問答では…
聖「スカーレット!生きたいと言え!!」
スカ「い"ぎだい!」
とワンピースの名シーンを踏襲する始末。
スカーレットはともかく、自分は共感性羞恥心で死にたくなった。よくこのセリフ採用したな…と…
曲りなりにもワンピースのアニメ、映画に携わった監督として「お前は恥ずかしくなかったのか?」と逆に問いたい。
それ以外は大きなツッコミ所もないから(細かい鼻に付く漫画パロは健在)友達と批判大会すら開けない。
また、人間が死に掛けた際、時空を超えて一旦煉獄?に集まる設定のはずだが、武器は基本剣と弓、銃は火縄銃のちょっと進化したヤツ。なのに聖の持ち物は現代日本の救急看護道具と言う超ご都合主義。(スカーレットが15世紀のデンマーク出身だからかとも思ったが、それだと全時代の人間が一堂に還す設定が破綻する)
ラスボスも主人公の父親の仇なのだが、実在の国を出してる以上、ヒトラー、スターリン、毛沢東、チャーチルなど、現実にはもっと有能でカリスマ性に富んだ指導者は何人も存在していて…細田守監督が生み出したキャラクター如きが時空を超えた煉獄で、大きな顔をしているのも癪だった。大して使いこなせていない設定なんだし、いっそデンマークや日本と言った実在の国や時代を出さなきゃ良いのに…
さらにご都合主義と言えば、物語の全てが神の手に導かれてるかのように進んでいく。
それもスカーレットがピンチになると、空が暗転して武器を纏ったドラゴンが敵に雷を落として助けてくれる。勿論、ドラゴンの正体が天災か神か或いは意志のある誰かなのか…その辺りは明かされない。
そもそも、基本ずーっと荒廃した砂漠を歩いて最果てを目指す旅をするのだが、なぜ荒廃した砂漠なのかや行商人が持つ水や食料の出処も明かされない。
結局、作り手としての責任を放棄して世界感を作り込むのが面倒臭くなっただけなんだと思う。
背景作画のことは詳しくないが、建物とモブキャラに所々コピペが目立っていて予算を節約している箇所も見て取れた。それがコピペにしろそうでないにしろ、せめて素人にはそう分からないようにして欲しかった。要するに視聴者をナメてると言うか、多少雑に作っても「有名監督だし一定の収入は見込めるだろう」と高を括ってるとしか思えない。
ストーリー展開はほぼ前作「竜とそばかす姫」のトレース。厳密には違うがダメな所も含めて既視感がすごかった。
そして2時間かけて本作で言いたかったことは「復讐なんて意味ない!自分の為に許そう!」これはアンチコメすら書いてはいけないという警告なのか?
そもそも「復讐」をテーマに掲げること自体、どこか間違えていると思う。
「復讐なんて意味ない」も「復讐を遂げる」もう使い古されて廃れたテーマではないだろうか。
だいたいそんな説教を、どストレートされたところで今さら一体どこの誰に響くのか?
なぜこんな誰の為にもならない作品を世に出すのかが本当に分からず、途中から怖かった。
もしかしたら、子供も楽しめる映画(言い方は悪いが「置きに来る映画」)を目指したのかもしれないが、それにしてはスカーレットが結構ボコボコされており(叫ぶだけで大したダメージが入っていないところは、まさに百獣のカイドウその人)、観ていて不愉快で子供向けというわけでもない様子。声の演技にキャラクターの表情や仕草が追いついていないのは非常に残念だった。
総じて細田守監督自身を含めきっと本作は誰のためにも作ってない、アニメの殻を被った虚無なのだろうと思った。
最後に自分はサマーウォーズまでの細田守監督の作品は大好きだ。おジャ魔女どれみの「どれみと魔女をやめた魔女」やデジモン「コロモン東京大激突」を作っていた頃のいい意味で何処か心を不安にさせるエモーショナルな作品や、ワンピース「お祭男爵と秘密の島」のようなギャグとサイコホラーが入り乱れるような作品に再び出会えることを夢見て、次も、その次も、そのまた次も細田守監督の作品を観ると思う。
…スタジオ地図が潰れたら、またあの頃の監督に戻ってくれるかな?笑
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