「酷すぎる脚本は他の良点を駆逐する」果てしなきスカーレット 肉さんの映画レビュー(感想・評価)
酷すぎる脚本は他の良点を駆逐する
映像や音響の迫力は凄さまじく死者の国というおどろおどろしい世界観に相応しい圧倒的な迫力を込めた色使いのアニメーションは素晴らしい。
設定もシェイクスピア四大悲劇であるハムレット(復讐譚)を基軸に西遊記型シナリオとも呼べる、旅を通じて目的地を目指すというわかりやすい代物。道中でやってくる邪魔者を倒し、時には友誼を結び、苦難を乗り越え成長し、目的地へ。
非常に単純でわかりやすい。
で、あるが故にあまりにも酷すぎる出来栄えに吐き気を催すほどの才能の無さを感じてしまった。これだけ恵まれた素材からどのような頭をしていればこれだけ酷い作品が生み出されるのだろうかと驚愕してしまう。
力の無い悟空
導き手として凡俗な三蔵
残虐でありながら最後にちょい役で味方面をする猪八戒と沙悟浄
味方サイドに魅力的なキャラクターが誰一人として存在し得ないのは本当に眺めていて苦痛だった。
またキャラクター性がぶれぶれで思いつきのごとく行動させているせいが行動の一貫性や説得力がまったく無い。人間を描いてる筈なのに人間味が無さすぎてドン引く。
特に主人公であるスカーレットは最後まで一貫性のない人物だったと言えよう。あれだけ自分の気持ちを演劇のように言わせているにも関わらず同一人物とは思えないような存在であった。
さらに未来を知らない存在が未来の文化に触れるシーンで自ら作詞した曲を名曲とする立ち位置においたのも作り手の悪い方向性への傲慢さが垣間見える。アニメーターとしては一流であっても脚本家としては素人よりも酷い。その差異に気づいてないだろう傲慢さが感じ取れる。そもそもが自分で脚本をやりたいと言ったところから始まった凋落である。脚本家を変えてからの酷すぎるシナリオの集大成とも言えるだろう。
辛うじて曲の出来が良かったのなら我慢できたのかもしれないがあまりにも盛り上がらない。映画でここまでわかりやすく「ここ盛り上がって楽しむシーンですよ」って場面が客席とのあまりの温度差に悍ましさすら覚えてしまう。よくこんなものを面白いと感じる感性で創作できたなと感心すら覚えてしまう。
また局所局所で作り手が過去の経験値で感動した部分をそのままインスパイアしたのかリスペクトしたのかはわからないが……あまりにも既視感の強い部分が多い。そのせいでツギハギだらけのお話も最後の最後の見せ場でいかにも感動をさせますよってあからさまな感涙誘導シーンは某国民的アニメで彷彿させる。そんな名場面を「自分ならこうした方がもっと感動できると思うんですよね」ってな具合で弄ってるせいかあまりにもお寒い。そもそものセンスがズレてるのだから感動出来るわけがない。
ともかく本当に最初からお話を作る才能が無い事を感じる一作だった。
声優に関しては主演が可哀想という他ならない。声が合ってないは個人的嗜好によるものであろうが、そもそも年齢が異なる場面で声分けをできないのなら無理に採用する必要はなかったのでは? と思ってしまう。無茶振りによる完全な汚点となったことだろう。ファンでなかったのなら罵詈雑言が漏れ出ていた。ネームバリューに騙されて◯◯みたいな仕事でも完遂できることを考えると彼女彼らは素晴らしい人格者達である。
バトルシーンの一部、ほんの一部だけは映像の迫力もあって非常に良かった。良かったが故に無双シーンからのとりあえず苦戦させとけという意思のもとで作られるシナリオの邪悪さに辟易してしまう。
アニメ好きとしてなろう系の後発した量産型のアニメを書いていた人々を苦戦もなくただ俺TUEEEしてるお話を私は面白くないと思っていたがそれは間違いだった。この作品の展開に比べたら遥かにマシどころか面白いとさえ言えるだろう。
今後、私が映像作品を観る上でこれを下回る作品は中々にお目にかかることはできないと思える。そういう意味では得難い経験をしたと言えるだろう。
そういう意味では悪い方向への逸材だ。もしもこの映画が人に役立つ可能性があるのなら今後、シナリオや脚本を書きたいと思っている人達への反面教師という側面で叶うだろう。
そう思えば出したチケット代は勉強代だったのかもしれない。そう思ってこの映画を心の中で虚無にしたいと思う。
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