その花は夜に咲く

劇場公開日:

その花は夜に咲く

解説・あらすじ

長編デビュー作「第三夫人と髪飾り」で注目を集めたベトナムの新鋭アッシュ・メイフェア監督が、トランスジェンダーの歌手とボクサーの激しくも切ない愛の軌跡を鮮烈に描いたラブストーリー。

1998年、経済解放から間もないサイゴン。昔ながらの活気と風情が漂う街の片隅で、望まぬ性に生まれたサンは夜の世界で歌手として働きながら、恋人でボクサーのナムとつつましく暮らしていた。しかし2人はその若さゆえに夜の世界に飲み込まれ、ナムは闇の地下ボクシングに手を染めるように。嫉妬と裏切り、焦りと不安が渦巻くなか、サンとナムの運命の歯車は次第に狂いはじめる。

メイフェア監督が自身の中学時代の経験や記憶をもとに脚本を執筆し、トランスジェンダーの友人をモデルに主人公サンのキャラクターをつくりあげた。主人公サン役には自身もトランスジェンダーである映画初出演のチャン・クアンを抜てきし、ベトナム映画界で活躍するボー・ディエン・ザー・フイがナム役を好演。

2025年製作/121分/R15+/ベトナム・シンガポール・日本合作
原題または英題:Skin of Youth
配給:ビターズ・エンド
劇場公開日:2025年3月21日

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映画レビュー

5.0豊潤な映像表現

2025年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

たくましく生きる人たちが住んでいるサイゴン市中。
生活感に溢れていて、日本が失いつつある原風景のようで
不思議と郷愁を誘い、その背景だけで画面に引き込まれる。

サンと恋人のナンのラブストーリーの経過や行く末については、
映像による暗示表現が多く、モヤっと、もどかしい部分もあるが、
逆にそれが鑑賞後に長く続く余韻を残すことに繋がっていると感じた。

死と隣り合わせで格闘するナンと、ナイトクラブで美しく踊るサンの対比シーン、
足先、手先のクローズアップ、美しい水辺の風物を含めた引きのシーン、
花や静物を切り取ったり、ピントをぼかした象徴的、詩的な表現など
主人公サンの望まぬ性に生まれたことによる複雑な事情、展開における切ない心情を
余すところなく全編映像の力で語りあげている素晴らしい映画だと思う。

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HK

3.5どうにもできない事だらけでもどかしい

2025年4月12日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

雰囲気のあるチラシのビジュアルと、まあまあ過酷な2人の境遇にしては単調というか、もっと波乱を期待してしまった。
サンに何かあったっぽいパーティーの回想も、前衛的な映像で嫌いではないけれど、そこはオーソドックスな方が良かったかなと思う。

後半で事件があって、遅ればせながら展開して面白くなったかな。
誠実なナムたちに対し、検事の蔑んだような言動が腹立ちすぎてイラッときた。
なんだかんだ切なくて良かった。

エンドクレジットがグエンさんだらけ

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コビトカバ

3.0積み重ねたエピソードを生かしきれず

2025年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1998年、サイゴン。ナイトクラブでダンサーとして働くトランスジェンダーのサンと、アングラ・ボクサーのナムの、ラブストーリー。
物語の要のキャラクターであるボスの描き方が中途半端だし、積み重ねられるエピソードも、思いの部分を描き切れずに流されてしまう。
そのため、最後の別れのシーンもさして盛り上がらず、全体の印象が薄くなってしまった。いいシーンも多いのに、残念。

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ファランドル

4.0ゆく川の流れは絶えずして

2025年3月28日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

読書していると、その作家の文体に合う合わないの相性の問題にしばしばぶつかります。小説の内容は面白そうなのに作家の文体が合わなくてなかなか読み進められない… 映画でも同様なことがあって、この監督(作品)の語り口が好きだ(嫌いだ)というようなことが起こり得ます。このベトナム発のラブストーリーですが、語り口が自分には相性がよかったようで、始まってしばらくして当たりかもと思いました。ちょっと緩めのテンポで、劇中に出てくるメコン川の流れのようなのかもとも感じました。

内容はと言えば、トランスジェンダーのダンサーとボクサーのラブストーリーが軸なのですが、若者特有の性急さや危うさ、脆さを描いていて青春映画の側面もあると思いました。上記の文体•語り口の話に繋がるかもしれませんが、時おり、はっとするような美しいシーンやいかにも映画的なシーンが出てきます。また、複数人物がひとつの画面におさまるときの人の配置、構図が絶妙で、登場人物相互の関係性、距離感をうまく表現しているなと感じました。アッシュ•マイフェア監督の作品は初見だったのですが、他の作品も見てみたいし、今後の作品にも注目したいです。

劇中にメコン川の風景が出てくるのですが、川の流れを見ていたら、なぜだか、鴨長明の『方丈記』の冒頭の一節「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」が浮かんできました。彼らも彼らの愛も川の流れのように移ろっていったのでしょうね。

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Freddie3v