「まさしく、鬼才たる由縁がこの作品」クラッシュ(1996) shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
まさしく、鬼才たる由縁がこの作品
クローネンヴァーグ以外に、こんなシナリオを誰が書ける?
交通事故の衝撃、死の恐怖、直接的な肉体の痛みがフェティシズムの脈絡に則って快楽に変わる人たち。衝撃的だ、余りにも衝撃的な発想だ。否、発想ではなく現実かもしれない。自分の生活や人生で中々出会いそうもない経験を映画を通して体験出来る。才能溢れる監督によって、異次元の体験が出来るのも、映画の醍醐味の要素である。とても興味深い映像体験だった。レヴューは濡れ場シーンばかりがフューチャーされているが、エロスとタナトスが組んず解れつする見事なカット割りが、台詞と演出と俳優陣の蠱惑的な演技力によって優れた映像美へと昇華されていたのも発見だった。映像にしろ、文学にしろ、音楽にしろ、あらゆる表現手段において、快楽の延長線上に迎える死への憧れは持って来いのテーマである。
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