キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン : インタビュー
スピルバーグ、ディカプリオ、ハンクス、当代きっての人気者3人が組んだ話題作、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」。この3人が揃ったところを小西未来氏がロサンゼルスでキャッチ。取材慣れした小西氏も、ずらりと並んだこの3人の前に出ていくときは「まるで面接を受けに行くみたいだった(笑)」と告白する3人同時インタビューを大公開!(聞き手:小西未来)
スピルバーグ、ディカプリオ、ハンクス勢揃いインタビュー
「これはとてもパーソナルな映画なんだ」
――「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」は軽快でとても明るい作品ですよね。で、偶然にもお三方全員の前作がみんなダークな作品なんです。これは意図的なものなんでしょうか?
スピルバーグ:「たしかに、最近はダークでシリアスな映画を多く作っているし、過去2作はどちらも暗いSF映画だった。それに比べたら、この映画はバケーションのようなものだよね。でも、同時に、ビタースウィートな悲しさが漂っているのも事実なんだ。離婚家庭に育った少年が、自分探しに出るという物語だから。それに、少年を追いかける刑事のカール・ハンラティにしても、家庭がない。つまり、2つの傷ついたハートが、お互いを見つけあう、というストーリーでもあるんだよ。派手な追跡劇とか、楽しい出来事はたくさんあるんだけれど、実はとてもパーソナルな映画なんだ。もしかしたら、自分にとってもっともパーソナルな作品かもしれないぐらいにね」
ハンクス:「タイミングはあまり関係ないよ。『ロード・トゥ・パーディション』という暗めの映画のあとにこの映画をやることになったのも、いい脚本を立て続けに受け取って、それがたまたま明るい映画だった、というだけでね」
ディカプリオ:「この映画を『リハビリ』と表するのには抵抗があるけど、撮影中、インディペンデント映画のようなエネルギーを感じたのは確かだよね。こんなに躍動感に溢れた現場は、ほんとうに久しぶりだよ。スティーブンほど仕事の早い監督をぼくは知らない。いままでで最高の映画経験のひとつだと断言できるね」
――最近、ハリウッド映画のなかにも野心的な作品が出てきました。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」もスタジオ映画らしくないパーソナルな作品で、ハリウッドが変わってきたということなんでしょうか?
スピルバーグ:「この映画を作ったのは、自分のスタジオだからな」
ハンクス:「この男はどんな映画でも、撮ることができるからね」
ディカプリオ:「だれも彼に逆らえない(笑)」
スピルバーグ:「いろいろ苦労も多かったけど、ドリームワークスを興してよかったよ(笑)」
――ドリームワークスというスタジオを持っているからこそ、自由に映画を作ることができるということですか?
スピルバーグ:「いや、スタジオを持っていることと、好きな映画を自由に作れることはあまり関係ないんだ。好きな映画を作るためには、まず、映画監督として名声を勝ち取らなくてはいけない。そのために、良い映画を作り続けて、ヒットを飛ばし続けて。わたしの場合、『ジョーズ』が大ヒットしてからは、どんな映画も好きなように撮ることができるようになった。なかには、わたしに向いていないような映画を作らせてくれた、まぬけなスタジオもあったけどね(笑)」
――(笑)
スピルバーグ:「ただ、最近になってスタジオがインディペンデント的な作品を評価するようになったのは事実だね。若手は低予算のインディペンデント映画を積極的に作り、それらはサンダンス映画祭で公開されたり、インディペンデント映画の配給会社によって配給されて。ハリウッドの歴史のなかで、ここまで多くフィルムメーカーに門戸が開かれたことはないと思う。たとえば、ここにいるトムなんて、奥さんのリタ・ウィルソンと一緒に、インディペンデント映画『マイ・ビッグ・ファット・ウェディング』を作った。それが、いつのまにか話題を呼んで、世界的なヒットに繋がった。こういう現象を見て、メジャースタジオはそれまで敬遠していたパーソナルな題材にも手を出すようになってきたし」
>>次のページへ