「今風…とは?」機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning Yos007さんの映画レビュー(感想・評価)
今風…とは?
前半はこのストーリーが過去作のパラレルワールド(今風に言うと別の世界線か?)と言う事が丁寧に描かれている。自分は1st世代ではあるが、既に様々なアナザーガンダムに慣れている事もありすんなり受け入れられたし、1stの超有名人の声優変更も最近の中の人は重厚感がマシマシになった替りにスピード感が損なわれている感じを受けていたので、いつか交代するならこのタイミングでいいと納得できた。
後半は一転、新しい世代でのお話。作画やテンポ感などおおむね楽しめたんだが…
主人公・マチュの行動の動機が視聴から時間が経つ程不快で不愉快になって来た。
少なくともこの映画の中ではマチュはいわゆる「普通」の女子高生で、現状に大きな不満がある様な描写は見られなかった。だが彼女は劇中2回、自らMSに乗る選択をした。
一回目は軍警察を止める為だが、それ以前の軍警察の行動は横暴に見えたものの、目的はコロニー内に不当に侵入してきたジオンのMSへの対応と正当であり、且つ見える範囲にMSを操縦できる人間が二人居た(自分より適任者がいる)にも関わらず搭乗している。もし自分がガンダム始め色んなロボット物のアニメを見ていなかったなら、この場合とる行動は自己保身であり、言い訳を考えるか全力で逃げるかの二択である(もしマチュがこの世界のロボットアニメガチ勢ならワンチャン自分の活躍を夢想してノリノリで乗り込むかもだが…)。思春期とは言え、一般的な家庭に育った高校生がその様な行動に出るかはなはだ疑問に感じた。むしろ現状に不満がありそうなニャアンの方が動機がありそうに見える。
そして二回目、クランバトルへの参戦である。現金が必要(こちらもニャアンの方が切実で、マチュに関しては新しい携帯端末が欲しいと、それ程重要には見えない)と言う事もあるが、何よりマチュが求めたと感じたのは「キラキラ」だ。Gクアクス初搭乗時に1stでアムロとララァの間にあった感応の様な描写を体験し、あれをまた見たいと。本物の戦争ではないクランバトルとは言え、銃弾は飛んでくるし、MSは頭部を破壊されただけでも誘爆の可能性は十分ある。死の可能性は普通に暮しているより格段に跳ね上がるし、クランバトルは非合法のギャンブルでもあり、今までの生活に戻れなくなる事も考えられる。我々視聴者はニュータイプ同士の感応は人の革新につながるものであり(実際にはその後必ず悲劇につながり台無しになるのだが)素晴らしい可能性を秘めているのは知っているが、劇中ではそこまで理解されていない単なる不思議な体験程度のモノであり、クランバトルに踏み出す最大の動機が「キラキラ」であるならばあまりにも軽薄だ。他のリスクを無視して安易に快楽を求めて麻薬に手を出す一般家庭の子供と重なって見えて、これが今風というか今の若者の行動理由になるのだとしたら怖いとさえ感じた。
もちろんこの後半部分含めてこれから始まる物語の導入なので、そちらの方で納得のいく理由が語られるのならストンと腑に落ちることもあるだろうけど、この映画単体での評価となれば、以上の様な怖さを感じた部分で自分の感性的には評価の☆を減らさざるを得ない。
ただ、確かにその後の視聴の動機としては充分になったので、作り手側の罠にまんまとはまった気はするが…