劇場公開日 2025年6月6日

「ターニングポイントは「悪い子じゃなくて、悪いことをしちゃうだけ」」リロ&スティッチ おけんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ターニングポイントは「悪い子じゃなくて、悪いことをしちゃうだけ」

2025年6月26日
iPhoneアプリから投稿

序盤はリロとスティッチがひたすら暴れ回り、生活をかき乱し、すでに火の車だった家計にどんどん追い打ちをかけていく。「これ本当に最後まとまるのか?」という不安と、子供ながらの無邪気さゆえに現状の危機感が全くないまま、家族を破滅の道に進めている姿にドン引きしていたけれど、終盤では気づいたらついつい涙が流れてしまっていた。

変わり者扱いされてクラスに馴染めないリロと、何もわからないまま生まれてきたことすら罪とされ、追われる身となったスティッチ。

お互い未熟ながらも「初めての友達」ができたことで生まれる喜怒哀楽を通して、少しずつ成長していく。

特にターニングポイントになったのは、リロが自分を『悪い子』と否定するスティッチに対し、「悪い子じゃなくて、悪いことをしちゃうだけ」と声をかけるシーン。

子供なら誰しも、自分の欲求をうまくコントロールできずに他人を傷つけたり、モノを壊してしまったり、後戻りのできない失敗をしてしまうことがある。そんな時、行動と人格を分けて考えることができないからこそ、「自分は悪い子なんじゃないか」と思い詰めてしまうのだと思う。

人間誰しも失敗はあるし、いつまでも未熟なもの。それでも生きていかなきゃいけないし、否が応でも明日はやってくる。

なにかやらかしてしまったらといって、自分を悪人扱いするのではなく、「悪いことをしてしまった」とちゃんと反省して謝って、また立ち直るしかないんだと思う。

この言葉は、リロ自身がナニからかけられた言葉でもある。一見すると、ただ聞いたことのある言葉をスティッチにそのまま返したようにも見えるが、その後のリロの言動を見ていると、決して上っ面だけの受け売りではないと感じた。

おそらく、ナニに言われた当時のリロは、その言葉の意味をまだちゃんと理解できていなかった。でも、スティッチと暮らすことを決め、ナニからリロの「世話係」という役割をもらったことで、責任感やある種の親心が芽生えたのではないかと思う。

そして今度は自分がその言葉をかける側になったことで、はじめてその意味を立体的に理解し、実感として気づけたんじゃないだろうか。

いまの時代、リロやナニのように不可抗力によって厳しい環境や立場を強いられている人は少なくないと思う。

そして、苦しむたびに「努力不足だった」「運が悪かった」と自責の念にかられて、さらに追い詰められてしまう人もきっと多い。

でも、その問題の原因は単純じゃなくて、いろんな事情や制度が複雑に絡み合っている。たとえひとつ法律が変わったとしても、それだけで救える人ばかりじゃない。

理屈だけではどうにもならないことがたくさんある世の中だからこそ、理屈では説明できない“原動力”になりうる「オハナ(親しい友人やコミュニティも含めた、広い意味での家族)」の存在こそが、人を救ってくれるのだと感じた。

とにかく、ナニが報われてよかった。

あと、今回のヴィラン(?)であるジャンバ博士とプリークリーの掛け合いもコミカルでとても良かった。笑

おけん
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