「原作(アニメ版)は観てから行かない方がいいかも…」リロ&スティッチ しーぷまんさんの映画レビュー(感想・評価)
原作(アニメ版)は観てから行かない方がいいかも…
原作はリアルタイムで3作品(初代、スティッチ、リロアンドスティッチ2)まで視聴済み。
この機会に一作目は前日に予習してから観に行きました。
また、海外で「結末や細かい改変に賛否が生まれている」と聞き、
事前に国内外のレビュー動画を賛否どちらとも合わせて10本くらい観ております。
結論からいうと、「前日にアニメ版見なきゃ良かった(初代の記憶がぼんやりしたままで言った方が楽しめた)かもしれない」という感じです。
大小さまざまな改変があって「改変する事」それ自体には何も思わないのですが、
本作の改変が「それ必要だった?」っていちいち思わされるので非常にノイズです。
いくつか気になったポイントを列挙します。
◯スティッチのキャラクター造形と心情の変化
→スティッチ(もともとの名前は試作品626号)はジャンバ博士によって作られた「破壊衝動を備えた非常に強力で凶暴な生物」
…ってところまでは概ね同じなんですが、地球についてからの行動は最初から破壊的じゃなくて、
ただ欲求に従って動いてるようにしか見えませんでした。
(「ただケーキを盗み食いしただけじゃんw」って思えます)
その後も原作にリロに言われた「たまには壊すんじゃなくて何か作ってみれば?」ってセリフとその周辺のシーン(結局は作ったものを怪獣映画を再現しようとして破壊した)も無くなってて、あんまり「凶暴な生物」までは見えません。
また、「自分には本物の家族がいない」と知る原作でも屈指の名シーンが何故か削られてます。
「みにくいアヒルの子」の本を読むシーンもアヒルの親子を見かけるシーンも無くなって代わりにカエルの家族?を見かけるシーンに謎に改変されています。
(っていうかカエルの子はオタマジャクシじゃね?w)
原作では「分子構造上水の中では生きられない(泳げない)」って設定も何故か「重くなってしまう」というちょい足しの設定も意味ありました?
ラストシーンで「ナニが決死のレスキューをする」ためだけに追加されたようにしか思えませんでした。
◯ガントゥを完全カット
ここら辺は事前にアナウンスがあったようですが、原作のヴィラン(になる)ガントゥ大尉が完全に消し去られてしまいました。
これによりジャンバ博士が途中でヴィラン化するのですが、
原作だと主要キャラになるエイリアン達は「各々が使命や司法取引を目的として626号の捕獲に臨む」という非常に合理的かつ納得のいく行動原理でした。
なおかつ原作の一作目で銀河連邦の軍をクビになったガントゥはヴィランとしてその後も活躍していくのですが、ガントゥがいなくなりこの先続編を作る上でかなり新しいプロットを考えなければならなくなりました。
加えてジャンバ博士もヴィラン化する原因が「銀河連邦の議長に急かされた挙句「任務達成のタイムリミットが迫ったので『銀河連邦に反旗を翻す』」という暴挙に出ます。
これも続編以降の「ジャンバ博士がリロ達のオハナ(家族)になり、彼が逃がしてしまったスティッチ以外の試作品達を探す上での解説役になる」という路線も、
かなり難しい「言い訳」を考えなければならなくなりました。
◯ナニのキャラ造形と周辺の状況
これは他のレビュアーさん達が賛否どちらにせよ必ず議題に挙げてた場所ですね。
結末が「ナニは隣人にリロを養子縁組して大学に行く」という形になりました。
それ自体は(「オハナってセリフが軽く見えてあまりいい気はしませんが)良しとしましょう。
あとそもそもナニが「成績優秀でサーフィンもトロフィー貰うほど上手かったし、海洋生物学を専攻できる大学から学費免除で入学を打診されていた」というスーパー優秀な設定が追加されているのですが、
「結末を変えるために逆算してこの設定追加してない?」と思ってしまいました。
あとは彼女が抱える「ヤングケアラー」問題。
原作だと「スティッチが加わった事によって家事などをする人手が増えて留守をスティッチに任せて働けるようになり、デイヴィットともいい関係になってリロもナニも生活は充実、万事解決」というこれはこれでとんでも解決でしたが、
これも「スティッチは高度な知能を備えている」という設定や続編の展開に活かされているのでまあ良しとしましょう。
ただ、今回の結末(大学に行く)というところまでは良いとして、
「ヤングケアラー問題」がそう簡単に解決できない問題として、
「周囲の誰も頼れないから例え要介助者やきょうだいを誰かに肩代わりしてもらっても「1人で生きていかないといけない大変さ」は残る」というところがあると思うんですけど、
そもそも本作の冒頭時点でその部分はナニは7割方解決できてるんです。
それが本作で追加された「ナニの隣人という設定になったデイヴィッドとその母のトゥトゥ」という改変。
ナニはリロの世話の一部をトゥトゥに預けてますし「頼れる人」がいるんです。
ちなみに原作では「数少ない頼れる人」の中にデイヴィッドがいたのですが彼が何故か「空気の読めないボンクラ」というキャラ造形に変わってます。
そして「離れ離れになってしまう」という設定も貧しさゆえの葛藤や達成の難しさだと思うんですが、
なぜか最後にリロはタブレットとかいう高級品を持っていてナニと通話し、
なんなら(おそらく誰の許可も得ていない)銀河連邦産のポータルガンを使ってナニはリロの家に簡単に帰ることができました。
これは「ヤングケアラー問題に対しての回答が原作の『家族が1人増えた』より安易じゃない?」と非常にモヤモヤしました。
◯コブラ・バブルスの経歴
原作だと「福祉局の局員なんだけど実は元CIAの諜報員で銀河連邦の議長とも顔馴染み」という設定でしたが、
なぜか福祉局員役が別にケコアというキャラを当てて、バブルスは「現職のCIA諜報員で福祉局員の重役になりすます」という謎の改変が為されます。
これによって原作では最後の方で「リロとスティッチが離れ離れにならないよう知恵を回して手助けする」という粋な計らいがなくなり、
「実はCIA諜報員だったのか!」という驚きもありません。
なんでキャラを分割したのかよくわかりません。
そもそも議長がスティッチをリロ達に預ける理由が「地球の契約にみだりに干渉してはいけないという理由ができてしまった」ではなく、
ただ「情に流された」だけです。
この辺は「改変する上での作り込みが甘い」という他ありません。
あと予算の関係か「宇宙船でのドッグファイトによる救出劇」が無くなって、
「宇宙船に対して地球の自動車で行方を追う」という非常に地味な絵面になりました。
地球の乗り物で考えても飛行機に車で追いつけるわけねーだろw完全にスティッチとリロが墜落させてなきゃ終わってただろww
全体的にバブルスの活躍や「福祉局員としての威圧感」が無くなってつまんないキャラになりました。
他にも「ギャグシーンが笑えないしあんまギャグシーンもないしつまらない」とか、「法を犯したり人のテーブルに置いてあるもの盗んでオブジェを作ったりと前半のリロが不快」とか言いたいことはありますが、
これだけは言えます。
「アニメ版見た方が時間も物語もタイトでコンパクトに収まっててちゃんと説得力あるし、面白いよ」
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