「トム・クルーズ主演の人気シリーズ30年の集大成!」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)
トム・クルーズ主演の人気シリーズ30年の集大成!
《先行上映(IMAX版)》にて鑑賞。
【イントロダクション】
トム・クルーズ主演の大ヒットシリーズ第8弾。前作でイーサン達の前に立ち塞がった新型AI“エンティティ”が更なる成長を遂げ、核保有国のミサイル発射システムを次々と掌握。人類存亡の危機に、イーサン達IMFのメンバーは“最後の試練(ファイナル・レコニング)”に挑む。
監督・脚本は第5弾『ローグネイション』(2015)以降、第6弾『フォールアウト』(2018)、第7弾の前作『デッドレコニングPART ONE』(2023)に引き続きクリストファー・マッカリー。
また、本作の製作費は約4億ドルに上ると言われ、これは「世界で最も高額な製作費の映画(2025年5月現在)」である。
【ストーリー】
“エンティティ”との戦いから2ヶ月。“それ”はネットワークのあらゆるシステムに寄生して更なる成長を遂げ、やがて人類の終末シナリオを企てるようになった。ネットではエンティティの考えを崇拝する過激な陰謀論者が多数生み出され、各地でデモ活動が過激化。そして、その脅威は各国の政府機関にも潜んでいた。
イーサンはガブリエルとの死闘で手に入れたエンティティのソースコードである十字架型の鍵を入手して以降、行方を晦ましていた。彼の元には合衆国大統領からのビデオメッセージが届けられており、大統領はイーサンの力を必要としていた。
ベンジーとルーサーと合流したイーサンは、ガブリエルの行方を探す為、彼に裏切られて刑務所に収監されていたパリスを救出してメンバーに加える。
ガブリエルの行方を追ってロンドンにやって来たイーサン達だが、イーサンもまた政府から追われる身であり、ガブリエルを待ち伏せる最中にエージェントに見つかってしまう。窮地に陥った彼を救ったのは、新たにIMFのメンバーに加わったグレースだった。
ガブリエルを確保しようと奔走するイーサン達だったが、あと一歩の所で逃げられてしまう。彼の隠れ家に残されていたのは、エンティティと交信出来るカプセルだった。
危険を承知でイーサンはエンティティと交信する。エンティティは“終末の保管庫”と呼ばれるサーバー施設を探しており、前回の失態によって切り捨てたガブリエルの代わりにイーサンを利用しようと目論んでいたのだ。エンティティは既に自身の掲げる終末論の実行に動き出しており、人類に残された時間はあと4日しかないと告げる。
エンティティと交信したイーサンは、それを破壊する為にワザと合衆国政府に拘束され、必要な物資と人員を用意させようと計画する。
時を同じくして、ガブリエルは隠れ家に潜むルーサーを襲撃し、彼の開発したエンティティを誘き寄せる為の通信端末を奪取。エンティティの支配権を得て、自らが世界の全てを掌握しようと動き出す。
合衆国政府に拘束されたイーサンは、エンティティが世界の核保有国のミサイル発射システムを次々と掌握しており、残すはイギリス、中国、ロシア、そして世界最大の核保有国であるアメリカのみだと知らされる。
タイムリミットは72時間。イーサン達はエンティティを破壊すべく、“不可能作戦・最後の試練(ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング)”を開始する。
【感想】
前作のラストから公開を心待ちにしていた、個人的2025年最大の期待作。
第1作目の公開から30年の時が経ち、いよいよシリーズのクライマックス、集大成を予感させる予告編から、否が応でもこちらの期待値は上がり、先行上映があると聞いてすぐさま駆け付けた次第。
このシリーズは、回を重ねる毎に「主演のトム・クルーズが如何に無茶なスタントをスタントマンなしでやり切るか」を更新していくシリーズだったが、間違いなく本作のスタントはシリーズ史上、そしてトム・クルーズのキャリア史上最も過酷なスタントの連続だった。
その為、脚本は最早トムにどれだけ無茶をさせるかありきで書かれており、整合性や構成の複雑さは二の次。しかし、ツッコミ所満載ながら、よくもこれだけ「ピンチ、ピンチ、またピンチ!」という展開を次々と繰り出してくるなと感心させられた。
イーサンが死ぬはずがないと分かっていながらも、毎回毎回ピンチの度にハラハラとさせられ、171分という長尺も全く苦痛に感じなかった。このトム・クルーズとスタッフの、「如何に観客を楽しませるか?」というエンターテインメント性最優先の全力投球ぶりには、惜しみない拍手を贈りたい。
しかし、そうしてトムことイーサン・ハントの活躍に焦点を当て過ぎたからか、他のメンバーの活躍は義務的、淡白的になりがちな印象。
加えて、本作から正式にメンバーに加わるグレースやパリス、ドガに活躍の場を用意した都合上、これまで彼を支えてきたメンバーは端に追いやられてしまっており残念だった。
ルーサーはラストのメッセージこそ感動的ながら開始30分ほどでまさかの死亡。ベンジーに至っては、クライマックスで負傷した事でエンティティの捕獲どころかシステムの接続すらグレースに頼らざるを得ない状況に追い込まれ、結果的にシリーズ中最も地味なのではといった活躍で終わってしまった。
また、私は前作でイルサ(レベッカ・ファーガソン)がまさかの退場をした際、前作の冒頭でイーサンに「君は死んだという事にしろ」という台詞を投げ掛けられていた事から、本作でカムバックする伏線なのではないかと期待もしたのだが、まさかまさかの前作の呆気ない退場が本当に最後だったのには落胆した。
メンバー同士の掛け合いや、話の展開と構成の面白さ、ラスボスへの鮮やかな勝利から、個人的なシリーズNo.1の『ローグ・ネイション』は超えなかった印象。
ガブリエルの存在は、エンティティと共にシリーズ最大の脅威として盛り上がる事を期待していたのだが、前作のラストでイーサンに出し抜かれて以降、エンティティには見放され、クライマックスの小型機での空中戦のラストでは小物臭満載の捨て台詞を吐いた後、即座に尾翼に激突して死亡と、何ともみっともない姿で幕を閉じてしまった。結局、イーサンとの因縁云々もイマイチ分からない中途半端なもので終わってしまい、せっかくの人間側のラスボスを粗末に使い捨ててしまうのは勿体なく感じた。
【シリーズの集大成!やっぱりこれで最後?】
トムとクリストファー・マッカリー監督は、本作以降も必要とあらばシリーズを存続する意思はあるようだが、ひとまずのラストとしてか、本作はシリーズの過去作、とりわけ『1』(1996)と『Ⅲ』(2006)の要素が再び活かされている。
特に、『1』に登場したCIAのウィリアム・ダンロー(ロルフ・サクソン)の30年ぶりの復帰は、公開前から大きな話題となっていた。イーサンによってCIAから左遷された身である事から、敵か味方か分からないという絶妙な立ち位置だったが、「イーサンのおかげで穏やかな人生の喜びや愛する妻を得ることが出来た」と、徹底してイイ人ポジションで活躍しており、ソースコードを狙うロシアを騙す為にキッカリ地球の真裏の座標を送信する機転は面白かった。
ところで、実は私はシリーズ中『2』(2000)と『Ⅲ』を未鑑賞であり、『Ⅲ』に登場した“ラビットフット”という品物がここに来て意味を持つとは思わなかった。調べると、このラビットフットが具体的に何の為の品かは作中で明かされなかったそうで、そうした未回収の要素を拾い上げ、後付けで作品に盛り込むというのも、シリーズの集大成に感じられた。
【総評】
トム・クルーズの代表作シリーズの一つの区切り、過酷なスタントの到達点としてのエンタメ性の高さは、間違いなく劇場のスクリーン、また出来れば「Filmed For IMAX」作品の本作はIMAXスクリーンで鑑賞すべき作品なのは間違いない。
不満点もあるが、トムの観客を楽しませようとする勇敢なスタント、これまでの活躍を讃える意味でも、本作の存在を肯定したい。
ところで、シリーズが存続するのなら、イーサンはこれ以上一体何から世界を救えばいいのか?宇宙人?もっかいやりますか?『宇宙戦争』(笑)
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