「M:Iという特別な映画、トム・クルーズというエンターテイナー」ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
M:Iという特別な映画、トム・クルーズというエンターテイナー
M:Iシリーズは、他の映画とは違う物差しで観てしまう。
一番の主役はもちろんトムのイカれたアクション、次点で見るべきは壮大で美しいロケ地や舞台装置、そして仲間との絆。誤解を恐れず言えば、ストーリーはそれらを引き立てる飾りに過ぎない。
実際マッカリー監督はスタントを先に決め、脚本はないままそのスタントが無理なく展開できるよう物語を組み立てていくといった作り方をするそうだ。物語が多少強引になるのは当然の理で、それを気にし過ぎて他の追随を許さないトムのアクションに集中できなくなるのはもったいない。
VFX全盛の今、「これどうやって撮ってるんだ?」とハラハラすることは滅多になくなった。明らかに危険なスタントは、映像的な驚きはあったとしても次の瞬間には「まあでもVFXだよね」と思ってしまう。
そんな現代において、トムのスタントはいまだに「これどうやって撮ってるんだ?」と思わせてくれる稀有なパフォーマンスだ。命綱をCG処理で消すとか、深海でパンイチは流石にセットだろうとかはあるがそれを差し引いても、彼のスタントはとち狂っている(褒め言葉)。
イーサンが無茶をする姿を見ながら、「これトムはマジでやってんの?大丈夫?」「トムすごすぎ」と思うのが楽しく、有難いのだ。
こんな長い前置きを書いてしまうような私だって、見ながら「これ普通は死ぬやろ」という脳内ツッコミはする。本作で言えば潜水ミッションとか、ガブリエルとの空中戦とかがその筆頭だ。
ついでに言えばご都合展開も認識はしているが、トムのアクションが本物であればよく、他の要素はアクションの動機が分かれば十分という程度に考えれば気にならない。状況説明とタイムリミット設定からのギリギリスタントはパターン化しているが、そのスタントがガチだからまんまとハラハラさせられる。
もっと言えば、ダンローとかラビットフットとかの前作との繋がりは監督の製作スタイルを考えれば伏線回収ではなく後づけなのだが(断定してすみません)、過去エピと繋げるのはファンが喜ぶ鉄板演出であり、そのサービス精神が嬉しいのだ。
シリーズの作品を重ねるごとに話は壮大になり、エンティティをめぐる前作からの物語は、トムがミッションを達成しなければ人類が滅びるレベルの話だ。ファイナルではあるが仮に次回作があれば、舞台は宇宙に広がってSFになると思う(冗談です)。
しかしまあ、トムはやっぱり神エンターテイナーですね。ファンが見たいものをわかっているし、いつも期待を超えたものを見せようとしている。ファンサービスもすごいし、会見で政治的な質問には答えないのもスターの模範だ。
今回もトム走りから無謀過ぎる空中戦までてんこ盛りだったが、個人的には深海のシーンが結構好きだ。
IMAXが深海の表現にとても効果を発揮していたし、映像が美しかった。潜水したトムが照明弾を放つ場面、実際には深海ではあのようにオレンジに近い鮮やかな色には見えないらしいのだが、あえての表現だと思う。とても美しかったのでOKです。どちらかというと、水中でイーサンにくちづけするグレースの口から出た気泡が海底に向かって流れていくのが気になった(あれも幻だからということで言い訳はつくのだが)。
最後のガブリエルとの決戦は、なんだかもう笑ってしまった。トムの顔の皮膚がバタバタしていて、限りなくリアルスタントな撮影をしたんだろうということが伝わってくる。そのことへの畏敬の念と、流石にありえへんやろという愛あるツッコミが渋滞してなんとも言えない気持ちになった。
ガブリエルの死に方がまた……パラシュートはひとつしかないよーだ!(ガツン!落下)なんか小物感満載で笑えた。最終作(一応?多分?)のヴィランがこれでええんか?
ラストはエンティティの入った5次元メモリを破壊して終わるかと思いきや、ロンドンで全員集合し、イーサンがそれを受け取って無言の解散という意味深な終わり方。
うーんこれは、シリーズ再開の余地を残したということか?
今年63歳になるトムは、今後またあのレベルのスタントにチャレンジするのだろうか。エンタメに厳しいトムだから、自身の体力の限界でクオリティを保てなくなればきっぱりスタントから手を引くような気もするが、それはもうトムのみぞ知る、である。
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