「支配のからくり」異端者の家 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
支配のからくり
末日聖徒イエスキリスト教の勧誘に訪れた二人の若きシスター、バーンズとパクストンがその家で恐怖の体験をする物語。
その家の主リードは宗教に関する知識が豊富で勧誘に来た若い二人を容易く論破してしまう。初めから彼には勧誘に乗るつもりはなかった。それを感じた二人は辞去を申し入れるが玄関ドアは閉ざされ半ば監禁状態に置かれる。
家を出たいのなら裏口の扉のどちらかを選べというリード。右の扉には信仰の文字、左の扉には不信仰の文字が。あくまでも強制ではなく自分の意思で選択させる。
しかしどちらを選んでも行き着く場所は同じ地下室。そこで彼女らは死者の復活の奇跡を見せられる。
すべての既存の宗教を信じないリードはこうして訪れた女性たちに奇跡を見せては己の創造した新たな宗教を信じ込ませようとしたのか。しかし仕込みの女性の言葉をヒントにトリックだと見破られてしまう。
バーンズの避妊インプラントの傷跡にあらかじめ目をつけていたリードがそれが彼女の復活を妨げているなどというこじつけにも騙されなかったパクストンは地下の部屋を見つけて脱出を試みる。しかし出口だと思った先には女性たちを監禁する檻が並べられていた。
すべては自分の意思による選択、自分の意思による判断でたどり着いた先が出口ではなく逃れられない監禁場所と知り愕然とするパクストン。
ここまで自分はすごろくの駒のようにリードの思惑通り操られていたに過ぎなかった。自分の意思で行動しているつもりがすべて彼の支配下にあったことを知り愕然とする。
この家の構造自体がまさに洗脳のための装置だった。第一段階で奇跡を見せることで洗脳を試みる、もしそれが失敗しても誘導により監禁部屋にたどり着かせることで敗北感を味わせ屈服させることにより洗脳するという二段構えの周到な支配のからくり。
思えばそれは宗教が辿ってきた歴史でもあった。奇跡をその教典で知らしめて信じ込ませ信者を募る。教典を信じようとしない異教徒たちに対しては十字軍のように武力で圧倒する。
信じ込ませて支配するか屈服させて支配するか。リードのしていることはそのような宗教の歴史を実践してるだけであった。
今までの成功体験からリードが油断して墓穴を掘ったことに加えて死の間際、死力を振り絞ったバーンズのおかげでパクストンは脱出に成功する。
彼女の手に止まった蝶の幻は胡蝶の夢のごとくシスターバーンズが見ている夢なのか、それとも蝶がシスターパクストンの姿になって解放された夢を見ているだけなのだろうか。
直接的に映像で怖がらせるのではなく、周到に精神を支配してゆくそのマインドコントロールの過程を見せられてなかなか興味深く最後まで見れた。
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