「理性的ホラー作品」異端者の家 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
理性的ホラー作品
モルモン教の布教活動をする2人の若い女性、シスター・バーンズ(ソフィー・サッチャー)とシスター・パクストン(クロエ・イースト)が、ミスター・リード(ヒュー・グラント)の住む一軒家を訪れ、酷い目に遭わされるという”宗教”ホラーでした。
原題の「Heretic」は、直訳すると「異端者」の意味であり、ミスター・リード、ないしはモルモン教を指していると思われるのに対して、邦題の「異端者の『家』」は、ミスター・リードの忍者屋敷顔負けのカラクリ屋敷を指しており、この両者の違いがお国柄の違いなのかなと思ったところです。
また、「モルモン教」というと、日本でも有名人が教徒であることや、街頭で布教活動をしていることで見掛けることがありますが、正式名称は「末日聖徒イエス・キリスト教会」というそうで、あくまで「モルモン教」というのは通称だそうです。また近年では、教団は「モルモン教」という通称を使わないように呼び掛けているそうです。いずれにしても、一応キリスト教の一派ではあるものの、カトリックやプロテスタント諸派、正教会などからは異端視されることが多いようです。それは、カトリックなどが新旧の聖書のみを正典としているのに対して、モルモン教では「モルモン書」など、独自の正典が存在していることや、 父なる神、子なるキリスト、聖霊は本質的に一体であるという「三位一体」論が採用していないといった点が異端視の主因のようですが、本作でもこの辺の話が出て来ており、モルモン教の特徴を一定程度踏まえた上で映画を制作していることが窺えました。
さて、肝心の作品の内容ですが、2人の女性がミスター・リードの家に行くと、言葉巧みに家の中に招き入れられます。家の中では、言わば”宗論”が闘わされることになりますが、ミスター・リードの異常性に怖くなった2人は帰ることに。ところがカラクリ屋敷のドアは中からでも開かず、監禁されてしまったことに気付く2人。そんな2人に残酷な仕打ちをするミスター・リード、その結末や如何に?2人は無事このカラクリ屋敷から脱出出来るのか?というお話でした。
映像的な怖さ、気持ち悪さという点では、そこまでドギツクはなかったように感じましたが、ホラー要素に宗教という衣をまぶしてあるため、何となく神秘性が感じられて、恐怖感が増幅されていたように思いました。また、ミスター・リードのとち狂った所業の動機が、最終的に支配欲であると判り、きっと制作者としては、宗教が支配に利用されるという歴史とか現状を言いたかったのかしらとも思えました。その辺は合点が行く話ではあるものの、仮にそうだとすると、ホラー映画としてはかなり理性に訴えかける話になっており、感性で刺激する一般のホラーと異なり、かなり冷静に受け止める結果になり、一般のホラーとは異なる鑑賞後感を得る作品ということになりました。
あと忘れてならないのが、悪役であるミスター・リードを演じたヒュー・グラント。先日観た「ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今」では、往年の「ロマコメの帝王」ぶりを見せていたのに、今回は一転してヤバい奴に豹変。あの甘いマスクだからこそ、薄気味悪さは倍増しており、人選として大成功だったように思いました。
いずれにしても、筋立てがしっかりしているし、カラクリ屋敷の仕掛けも中々面白く、結構楽しめる作品でした
そんな訳で、本作の評価は★4.4とします。
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