劇場公開日 2025年1月10日

「台風一過の青空のような晴れやかさで劇場を後にできる作品」オークション 盗まれたエゴン・シーレ Tofuさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0台風一過の青空のような晴れやかさで劇場を後にできる作品

2025年2月2日
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西洋絵画に造詣の深い知識人の皆様はエゴン・シーレと聞けば「あぁ、ウィーン分離派の画家ね」と思うのかも知れないが、その方面に全く疎い私にとってそんな名前は初耳。そのシーレがゴッホの作品にインスピレーションを得て自分なりの解釈で描いた「ひまわり」を巡る、実話に基づいた物語が本作。(どんな絵かは本作の公式サイトで確認できる。)

シーレの「ひまわり」は第二次世界大戦中にナチスドイツに略奪されたまま行方不明になっていた。それがフランスの工業都市ミュルーズで見つかったと聞いたオークションハウスで働く競売人のマッソンは鑑定士の元妻と共に、夜勤の工場労働者の青年マルタンの家を訪れる。そこから、純朴なマルタンの想いとは裏腹に、多くの人々の思惑が錯綜し……。

よっぽどの審美眼を持った一部の人を除いて、極々一般的な人々にとって美術品の価値なんて付いている値段以外には判断基準がないというのが正直なところだろう。しかも、その価格がどうやって付けられているのすら分からないまま……。

桁違いの価格がつくオークションを巡って繰り広げられる大人たちの心理戦や情報戦。そんな狂乱に巻き込まれる人とそこから一歩引いた場所に立つ人。自分ならどんな立ち位置を選ぶだろうか?

鑑賞後、台風一過の青空のような晴れやかさで劇場を後にできたのは救いだ。

なお、フランス語の原題の意味は「盗まれた絵」だそうだ。

Tofu