「母の気持ち」美晴に傘を Ericさんの映画レビュー(感想・評価)
母の気持ち
私はASD、投薬はされていないが美晴(日髙麻鈴)と同じく自閉症と診断されている。時折見せた美晴の「こだわり」はあるなあと思った。だが聴覚過敏ではないので音への感性は分からない。だから美晴について色々と言えない。ただ終盤になるにつれ、美晴が相手の目を見て話す場面が生まれるのは嬉しかった。
首を傾げたのが母・透子(田中美里)がなぜ耳元をはじめこれだけ自らを飾るのだろうということだった。途中でふと思った。これらは娘を守ろうとする心の装備ではないかと。夫の光雄(和田聰宏)が健康な時からそうだったのかは分からない。しかし夫が癌となり、美晴を守るのが自分だけになるとの思いが装備を強固にしていったのでは、と考えている。この「守る」中に凛(宮本凜音)がどれだけあったかもまた考えるところだが。だからこそラストは、だと思う。
善次(升毅)と息子の関係は起こったことは分かるが場面がないので、善次の苦悩を想像するのは難しい。それがより息子を失い空になった喪失感を表している。ああすればよかった、しかしそれは後悔だけで後悔したところで空白は埋まらない。
善次、透子、そして美晴が交互に言葉を綴るラストはまるで音楽を聴いているようだった。
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