美晴に傘を

劇場公開日:2025年1月24日

美晴に傘を

解説・あらすじ

自然豊かな北海道の小さな町を舞台に、家族の再生の物語をつづったヒューマンドラマ。

北海道で暮らす漁師の善次は、ケンカ別れしてから一度も会っていない息子の光雄をがんで亡くしてしまう。東京で執り行われた葬儀にも出席しないまま四十九日を迎えようとしていたある日、光雄の妻・透子が娘の美晴と凛を連れて訪ねてくる。突然の訪問に戸惑い上手く接することができない善次だったが、彼女たちを通して亡き息子に思いを馳せていく。自閉症で聴覚過敏を持つ美晴を守るのに必死な透子と、守られてきた世界から外に踏み出したいと願いながらも、不安を感じると夢の中に逃げ込んでしまう美晴。小さな町の人々とも交流するなかで、3人は自分自身の内なる声に耳を傾けはじめる。

息子を亡くした漁師・善次役で升毅が主演を務め、息子の妻・透子を田中美里、自閉症の孫娘・美晴を日髙麻鈴が演じた。劇団牧羊犬を主宰し、短編映画で国内外から高く評価されてきた渋谷悠の長編初監督作。

2025年製作/123分/G/日本
配給:ギグリーボックス
劇場公開日:2025年1月24日

スタッフ・キャスト

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(C)2025 牧羊犬/キアロスクーロ撮影事務所/アイスクライム

映画レビュー

3.0 味わい深い一本

2026年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

血を分けた父と、そのたった一人の息子とが、いっまでも対立したままでいるのはおかしい―。
光雄の生前には果たせなかった父子の和解を、光雄亡き今は、今度は自分が何としても成立させる―。

他所(よそ)に宿を取ることもせずに、愛児二人を連れた透子が善次の家にわざわざ斬り込んできた(評論子は、敢えて「斬り込んで来た」という表現を使います)のは、そういう透子の「不退転の決意」以外の何者でもなかったと、評論子は受け止めました。

実際、地元の寺で執り行われた光雄の四十九日の法要に、光雄からプレゼントされたという「あの服装」で参列するところなど、善次に、文字どおり「けんかを売る」ようなものですけれども。

しかし、そこに透子の堅い決意を読み取ったのも、独り評論子だけではなかったことと
思います。

透子は、それほどに深く光雄を愛していたのでしょうし、おそらくは、美晴と同じ障害を持っていたのであろう光雄のその障害すらも、深く、深く、もっと深く理解していたからなのではないかと、評論子は推測しました。

本作は、そこまでは語らないので「たぶん、おそらく」の範疇(ちゅう)ではあるのでは、あるのですけれども。

しかし、彼女のその「想い」に気持ちが至ると、本当に張り裂けそうなくらいの胸の痛みを、評論子は禁ずることができませんでした。

そういう意味では、本作は、透子と今は亡き光雄との、夫婦愛の物語だったと評することもできると、評論子は受け止めます。

障害をもった美晴の、亡き父の故郷での成長譚―。
確かに、そういう要素もあり、また善次自身や透子も、美晴によって啓発される部分がなきにしもあらず、ですけれども。
しかし、そう単純に決めつけてしまうと、本作の評価を誤るように、評論子には、思われます。

それやこれやで、いい映画―味わい深い映画を観たと思います。
佳作としておいても、まったく問題のない一本だとも思います。

(追記)
<映画のことば>
この子の気持ちを考えないんですか。
そんなだから、光雄さんの気持ちも分からないんです。
きっと、こんなふうに、あの人のことも追い出したんですね。

今は亡き光雄の妻・透子が、父子の確執を理解して、彼女の中にすんなりと受け入れていたということから推しても、光雄も、美晴と同じ障害を持っていた―ということについては、ほぼ断定ができると、評論子は受け止めました。

そして、善次・光雄の父子の対立も、そこに根本の要因があった。
評論子には、そう思われて、なりません。

つまり、その障害の故、光雄は善次の気持ちを受け止めながらも、父親(善次)を継いで漁師になることが、どうしてもできなかったのでしょう。

その一方で、船(漁船)は、俗に建造費が「1トン当たり1,000万円」とも言われるような高価な財産であることの他、漁師にとって、生計の資本となる掛け替えのない財産であること。加えて、刀が武士の魂であるように、漁師にしてみれば、その「魂」に他ならない船(漁船)を、自分の長子(男の子)に継がせたいー光雄に跡を継いで漁師になってほしいと願う気持ちは、他の漁師連中と同様、善次にしても当然のこととして、強かったことでしょう。

まったくをもって。
そう考えると光雄の障害は、何という「運命のいたずら」なのでしょうか。
本当に、やりきれない思いを、評論子は、拭(ぬぐ)い去ることが、少しもできません。

(追記)
どうやら、善次の船(漁船)は、いわゆる夫婦船(めおとぶね)だったようです。

子供の頃の光雄が目覚めると、海に(漁に)出ていて、両親は不在。
作りおきの(朝食の)卵焼きがタネのおにぎりだけが、サランラップに包まれていたとか。
(おにぎりのタネとしての卵焼きー。おそらく、それは、光雄の好物だったのでしょう。)

妻(光雄の母親)が早世してしまったのは、漁の重労働のゆえだったようです。
評論子は、そう理解しました。

(追記)
本作の舞台は、北海道のとある寒村。
善次が、おむすびの種に感動するシーンの背景には(ちゃんと)ポット式の石油ストーブが映されていました。

それは、北海道の冬には、どうしても欠かすことのできない暖房機―。
(もっとも、北海道でも、令和の今は、オール電化の家も増えてはいますけれども。)

この背景が本作の渋谷監督の意図たったのであれば、同監督は、北海道の家庭での「冬の暮らし」に、認識が深いと感じました。

北海道民としては、この背景は、北海道を舞台とする本作では、渋谷監督の意図だったと、受け止めたいところです。

(追記)
作中で、美晴の呼びかけに応じて、何度となく登場する「傘売り」の男―。
(「売り」といっても、傘は、タダでくれる。)

そして、たくさんの傘に護られて、満面に安堵の表情を浮かべる美晴―。

以前に「あなたの傘になりたい」という損害保険のテレビコマーシャルが放映されていたことを、評論子は思い出しました。

傘は単なる雨具としてだけでなく、古くから世界各地で魔除けや神聖な象徴として重要な役割を果たしてきたとか。[出典:傘全集 “傘”の知識や魅力をご紹介するWebメディア]

本作のタイトルが、美晴に「傘」を、であることにも、その含意があったと、評論子は思います。

(追記)
<映画のことば>
わくわく、ドキドキ。
ちょちょいの、どん。

本作の中で、美晴のことばとして、幾度となく呟(つぶや)かれる「太陽丸」という言葉。
(「また出た!」という妹・凛のセリフもあったかと思います。)

本来は、太陽をかたどった赤色や金色の円形の紋様・旗印を意味し、日本の国旗「日の丸(日章旗)」の古称や異称として使われるとか。神聖な日の出の太陽や、国家の象徴(日出づる国)として古くから用いられてきた神聖なシンボルなのだそうですけれども。[Google検索によるAIのざっくり要約]

美晴が好きな言葉として作中で紹介される「ぽかぽか」とか「ふわふわ」という語感から、「太陽の光」や「暖かい光」を象徴し、現実の寒々とした現実の不安(美晴の「傘」に対置して言えば「冷たい雨」)に対する「暖かさ」や「安心」を表現する彼女に固有の言葉として、評論子は理解しました。

(追記)
ただひとつ、惜しむらくは、光雄の遺骨を海に散骨するシーンでした。

美晴たちが乗っていた船は、おそらくは、「子供は危ないから乗せられない」と善次が言っていた、彼の船(漁船)という設定だったと思うのですけれども。

しかし、あれは、どう見てもクルーザー船。

地元の漁協(漁業協同組合)にでも頼めば、ちゃんと、北海道知事から配付を受けた登録番号(HK0-0000)が入った、モノホンの漁船をチャーターすることは、難しいことではなかったことでしょう。
(組合員の漁師はたくさんいるでしょうし、たいていの漁協は「指導船」ということで、自らも漁船を所有している。)

そもそも、それは、善次と妻(光雄の母親)とが漁に使っていた夫婦船だったはず。
シズル感を大きく減殺するといわなければならないでしょう。
その点は、本当に、残念に思います。
評論子は。

(追記)
自閉スペクトラム症(ASD)における聴覚過敏は、特定の音(掃除機、犬の鳴き声、甲高い声など)を過度に大きく、または苦痛に感じる特性です。脳の音処理機能やフィルタリング機能の偏りが原因とされ、イヤーマフや耳栓、物理的な距離確保が有効な対策とされているようです。[Google検索でのAI概要]

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talkie

5.0 父と息子が喧嘩別れし、息子が病死しても葬儀にも出ぬ父 四十九日に、...

2025年6月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

幸せ

斬新

父と息子が喧嘩別れし、息子が病死しても葬儀にも出ぬ父
四十九日に、その息子の妻と娘二人が来訪、そのまま祖父宅に滞在。

父は寡黙な漁師。
娘二人のうち姉は自閉症で聴覚過敏、姉妹仲良し、母がつきっきり。

出だしは戸惑い、揉めることも何度も。
話して素性が見えてくるにつれ、慣れたのでしょうか
心を徐々に整え、想いを馳せる様子。

それぞれの心中、最後にはすごい量の言葉の洪水のように溢れ出してきて
圧巻でした。

小さな街らしい、誰もがご近所の顔見知りなところ
かつて心当たりがある、懐かしい感じがします。
余市には行ったことは無いのですが。

本作の音声ガイド、チュプキさん制作、特に聞きごたえが濃密でした。
人物の機微,
なにが主語か, なにが注視されるか
ことの順序
監督ご本人が終始ナレーション, とても理解が深まりました.

劇中ですでに、オノマトペの多用、書道の筆順(書き順)など、"言葉" に使う神経がただならぬものを感じてはいましたが。
上映後の監督トークはむしろさっくばらん。ギャップに, いい意味で驚き, 楽しめました。

一点だけ気になったままのところ
ハイデガー "存在と時間" 書籍が複数回登場された、その目論見が気になりました。
(若いころ, 読もうと試みて, 早々に挫けたことが何度も)

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woodstock

4.0 みちょぱ似の美晴が気になりました。。

2025年3月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

聴覚過敏の自閉症の主人公?のみちょぱ似の美晴。
調べてみると日髙麻鈴(ひだかまりん)という元アイドルの女優さんらしい。。
彼女の演技をどう見るかで、この映画を見た人の評価が決まるんじゃないでしょうか?

私は最初彼女が自閉症という事が分からなかった。
最初は変なキャラなのかと思ったけど、見ているうちに何かしらの障害を持っている事は分かったが。。
最初に説明シーンでもないと、彼女の演技だけではすぐに理解できないと思う。
私は終始違和感を感じてしまったかな。

フォーラム福島での鑑賞でした。
この日は舞台挨拶付き。
監督の渋谷悠さんと父親役を演じていた福島県天栄村出身の和田聰宏さんが舞台挨拶に出てきました。
この中での話が面白かった。
和田聰宏さんの役者になる前の家族で行った占い師の話とか、36年ぶりという学校の先生が観客にいて質問コーナーで出てきたり。。
監督の話も面白かった。
普通の親は子供は自分より長く生きる事を当たり前と考え、障害者を持つ親は子供より一日でも長く行きたいと考える。
この対比を映画の中で描きたかったとの事。

話自体は、子供への親の愛情を感じられる良い話でした。
こういう独立系の低予算映画は、雰囲気が重要なポイントだと思う。
もう少し映像に拘って欲しかったかな。
舞台挨拶も面白かったし、映画鑑賞としてはとても楽しめましたね。

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はりー・ばーんず

2.5 クライマックスのシンクロが中々見事

2025年3月21日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

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ねこたま