「実はアレ、「⚪︎⚪︎な人ランキング」だったのかも知れませんね」遺書、公開。 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
実はアレ、「⚪︎⚪︎な人ランキング」だったのかも知れませんね
2025.1.31 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(119分、PG12)
原作は陽東太郎の同名漫画(スクウェア・エニックス)
序列が作られたクラスで起こる悲劇を描いたミステリー映画
監督は英勉
脚本は鈴木おさむ
物語の舞台は、日本のどこかにある私立灰嶺高校
2年になったD組では、クラス替え早々に「序列」となる一斉メールが各自に届いていた
担任の甲斐原(忍成修吾)も含めた序列になっていて、1位は姫山椿(堀未央奈)という生徒だった
それから4ヶ月後、クラスは序列に馴染み、何の問題も起こっていないように思えた
だが、ある日のこと、授業が始まったのにも関わらず、姫山椿が行方をくらましてしまう
甲斐原先生は親友の御門凛奈(髙石あかり)に彼女を探させたところ、凛奈は椿を女子トイレで「発見」してしまうのである
理由もわからない序列1位の自殺騒動
だが、この件はそれだけでは終わらなかった
参列を終えてクラスに戻った生徒たちは、そこで驚くべきものを目の当たりにする
それは、クラスメイト全員に宛てて書かれた姫山椿の遺書が、それぞれの机の上に名置かれていたのである
映画は、学級委員長の大島由梨(川島鈴遥)の進言を筆頭にして、椿の自殺の真相を探るために、遺書を公開していく様子が描かれていく
序列25人に対し、椿を除いた24通の遺書はパソコンで印字されたものだったが、それぞれに思い当たるエピソードが散りばめられていた
当初は、生前の感謝などを綴っていたように思えたが、ある時から「言葉には裏側がある」ように思えてくる
言葉通りに受け取ることもできるし、それ自体が椿と当人との関係性の裏側であるようにも見えてくる
だが、担任の甲斐原は「椿以外の誰かが作成し配布したもの」だと疑わない
また、遺書公開の中で、序列を作った人物が炙り出されていくのである
物語はそこまで複雑ではなく、ほぼワンシチュエーションミステリーとなっている
想定しうるあらゆることが起こり、それが単調に思えるシナリオに起伏を持たせていて、椿の遺書によって、クラス内で形成されたグループの意味も生まれてくる
序列を作ることによってできるグループ化と、それに付随する過ごしやすさと過ごしにくさ
それぞれは、誰かが作ったスクールカーストを自分の優位さに利用し、それが「椿自身が見たかったもの」を再現していくことになるのである
ネタバレレビューでも、流石に確信を書くのは憚られるのでこれぐらいにするが、驚きがある一方で、想定内であるようにも思える
ただし、24通を飽きさせずに最後まで公開させるシナリオはよくできていて、公開の順序によって緩急が生まれているところも面白い
最後には「誰にも知られずに済んだ犯人の本音」と言うものが登場するので、最後の一言一句まで集中して聞き逃さない方が良いだろう
映画のエンドロールは、キャラクターと演者名が絵で表現されていて、誰がどの役をやっていたかを復習できる仕様になっていた
また、パンフレットには全24通の遺書全てと公開順序、さらには「裏相関図」なるものまできちんと作られている
これを覚えた上で2回目を鑑賞すると、様々な意図的なカット割があることに気づく
水槽の中にクラスがあるようなカットも何度も登場するし、誰と誰が関係性が濃くて、その公開に違和感を感じているかもわかる
それによって、誰が遺書を書いたのかは読めるので、勘の鋭い人は初見で看過できるだろう
だが、本作は犯人探しがメインではなく、人間を観察することによって、どこまで思考と行動を誘導し支配できるのかと言うところを描いているので、実際にこれを行える人がいるかもしれない
そう言った意味では、サイコホラーの要素もあったのではないだろうか
いずれにせよ、この手の映画に限らず鑑賞本数や考察をしてきた経験から言えば、映画の構成である程度の着地点が見える映画でもあった
作り手目線だと非常にわかりやすい構成になっていて、配役でバレているところもある
それでも、どういう着地点になるのかの興味を維持していくので、うまいつくりになっているなあと感じた
映画は、ネタバレなしの方が楽しめるので、騙されたと思って、今読んだことを消去してから臨んでも良いのではないだろうか