蜘蛛巣城のレビュー・感想・評価
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黒澤明の最高傑作の1つだ。
黒澤明監督が、シェイクスピアの戯曲『マクベス』を、日本の戦国時代に置き換えた一大叙事詩。三船敏郎の狂気に満ちた熱演が印象深く、映画史上最高の死のシーンとも言われている。
原作の文言を使うことが無く、シェイクスピアが持つ詩情を削除する一方、それを補って余りある、鋭敏で刺激的な映像に満ちている。原作やシェイクスピアに詳しくない方でも、十分に鑑賞できる。
黒澤作品の中でも、特に冷酷でダークな世界観に満ちた作品だ。シェイクスピア作品の翻案としても、見事に成功している。原作への忠実さにこだわらず、黒澤明による『マクベス』の再解釈が全開している。
野心を突き詰めた人間の、避けがたい因果応報を、独自の鋭さと映画的な感覚による脚色で描き切り、生々しさと力強さを併せ持った、黒澤明の最高傑作の1つといえる。
黒澤ホラー
原作に触れることなく鑑賞。物の怪や予言など、オカルト・ホラー要素の強い作品。演出もかなりホラー寄り。
三船敏郎と山田五十鈴の演技がとにかく素晴らしく、引き込まれます。焦燥感、恐怖心、狂気に取り憑かれていく様を迫真の演技で表現しており、この二人の俳優が生み出す緊張感がクライマックスへ向けて張り詰めていきます。
そのクライマックスですが、見どころ満載の名シーンの連続!目が離せません。演出や映像技術も素晴らしく、今観ても「どうやって撮ったんだ?これ。」なシーンは驚愕。有名な矢のシーンでの三船のリアクションはガチだったんでしょうか(笑)むちゃくちゃやりやがるぜ…。
ホラー演出がかなり目を引きます。白黒だから余計に怖く感じました。本作では作品の構成や人物の表情や動き、撮影技法などに能の様式美を取り入れているとのことで、そのせいか緊張感のある作品になっております。
若干冗長に感じるシーンがいくつかありましたが、それも能を意識して作られたからでしょうか。個人的にはもう少し削っても良かったかな?って世界の黒澤に向かって何言ってんだって話ですよね、はい、すみません。
ホラーがどうとか言ってますが、結構大掛かりなシーンが特徴的でもありまして、騎馬隊による進軍のシーンは大迫力です。よくあれだけの馬と乗馬出来る俳優を集めたものです。
見どころ満載の黒澤ホラー。……ホラーでいいのかな…?私は怖かったぞ😱
物怪に誑かされる話
感想
野望と疑心暗鬼、神も仏もない戦国下剋上の世。
霧の中、蜘蛛城趾の碑が現れる。諸行無常、世の中は繰り返しの連続であるという呪文のような譜が流れていく。再び霧が流れ、濃霧になる。その霧が次第にはれるうちに、目前に、巨大な城が現れる。
戦は続く。北の館の主、藤巻の謀叛を鎮圧した一の城主、鷲津武時とニの城主、三木義明は時の蜘蛛巣城主で主君の都築国春へ出向途中、蜘蛛手の森で路に迷い、ふとした機みに老婆の姿をした奇々怪界たる雰囲気漂う物怪に出会う。物怪は、今宵より鷲津は一の砦の城主、三木はニの砦の城主。その後、鷲津は蜘蛛巣城主、三木は北の館の主となり、その息子は鷲津の次の蜘蛛巣城主になるだろうと言付ける。
夢か現か、物怪の話を聞き受け信じたために、その言付けは現実のものとなる。同時に鷲津の野望が悪霊を引き寄せ、己とその妻の性格を変え、数奇で残酷な人間の欲と業のなせる、怖ろしく醜い都築への下剋上を実行することにより、三木をも巻込み、二人の命運はいにしえより残されている蜘蛛手の森の数多の落命し悪霊となった者ども同様に命運が尽きることになる。
いにしえの世より続く戦、無念、非業、そして怨みを重ねて、死んでも死にきれない多くの成仏することの出来ない魂が集まり、悪霊、怨念をもつ蜘蛛手の森の物怪となり、下剋上の世を生き抜く者たちを誑かし、まさに蜘蛛の巣に虫類が繋るがごとく、その術中に嵌り、己の身をも自身の欲望に任せた諸行により、破滅に向かわせてしまう無常で不可思議な物語である。
配役は
物怪に謀られる武将鷲津に三船、千秋は三木を演じた。小田倉に志村喬。他、藤原釜足、土屋嘉男、稲葉義男、加藤武など黒澤組常連の壮々たる俳優陣。さらに鷲津を翻弄する女房、浅茅に山田五十鈴。物怪に浪花千栄子、また武将の怨霊で中村伸郎、宮口精二、木村功が怪演しておりあらためて観ても重厚でファンタジックな映像が展開され新鮮で素晴らしいと感じる。監督助手はのちにウルトラQ、ウルトラセブンの演出で名を馳せる若き日の野長瀬三摩地が担当し、蜘蛛手の森が動き出すがごとく、木々で擬装した都築、三木、小田倉の軍勢が城に押し寄せる映像や飛び矢の特殊効果を創り上げた。
黒澤監督はウィリアム・シェークスピアのマクベスを元に能楽の要素をマリアージュして、おどろおどろしい脚本を小國英雄、橋本忍、菊島隆三の各氏と書き上げた。撮影も壮大なセットを富士山の裾野に構築、騎馬武者隊の進軍シーンも豪快な撮影で素晴しい。
⭐️5
迫力ある三船敏郎
三船敏郎扮する鷲津武時らの働きよろしく謀反を鎮圧したが、殿への報告の途中蜘蛛巣城の由縁たる道に迷ってしまった。すると森の中で得体の知れない老婆に出会い予言を受けた。
観るのは二回目だが、改めて観ると三船敏郎の迫力ある顔は尋常じゃないな。でも時の武将が登城する道に迷うなんてちょっとね。 人を殺しながら出世していく侍の世。忠義が勝つか出世の夢が勝つか。 それにしても夫に謀反をけしかける妻の強さは凄いね。
シェイクスピア原作映画化の最高峰‼️
何が凄いかってシェイクスピア原作の世界観を日本の戦国時代にうまくを置き換えたこと、霧などの自然現象を利用して幽玄的な雰囲気を作り出したこと、本当に森が動いたように見える映像技術の素晴らしさ、三船さんのギラギラした演技と山田五十鈴さんのねっとりとした演技、誰も城主になりたくないと思う蜘蛛巣城というネーミング、本当に三船さんが射抜かれたとしか思えないクライマックスの無数の弓矢が放たれるシーン、シェイクスピアの世界観を表現するために能楽の様式美を持ち込むという天才的な発想‼️誰も真似出来ないですね‼️
昔も今も変わりなし。人の心が一番怖い。
ロンドンの王立劇場の柿落としで上映された際、恐怖のあまり失神者が続出したと言われる、なるほど怖い。怖いだけでなく、最初から最後まで一瞬の遊びもユーモアもなく(黒澤作品には珍しく)緊張が強いられる。疲れた。
そりゃ失神するわ。
黒澤作品は、若い頃は「用心棒」や「赤ひげ」などの分かりやすくて面白いのが好きだったけど(「七人の侍」は別格)、年とってくるとこの作品が一番すごいんじゃないかと思ってきた。
一番繰り返し観てるかもしれない(「七人の侍」は別格です)。
初めて観た時(もちろん初公開時じゃなくてリバイバルか名画座で)は、物の怪と騎馬での疾走と蜘蛛手の森とラストシーンがあまりにもインパクトが強く気付かなかったことが多かったけれど、観るたびにすごいことに気付かされる。
三船敏郎すごいけど、山田五十鈴すごいなぁ。でもやっぱり三船敏郎すごいや。ってすべてがそんな感じ。
スタッフもキャストもすごい。物の怪おちょやんやし。
CGのない時代(CGもすごい技術がいるんだとは思いますが)、ひとつひとつのシーンにかける時間、労力、知恵が現在とは比べものにならなかったのだろう。
面白くなるはずだ。
三船さんはアクションスターだ。
「影武者」「乱」、そして「スター・ウォーズ」も三船さんが出てたらもっともっと面白くなってたろうなぁ。
4Kリマスターで劇場で観ることができるしあわせ。
午前十時の映画祭ありがとう。
ただ、観客三人。もったいないなぁ。もっと映画館を選べないのかなぁ(劇場のスタッフまるでやる気なし)。上映館増やしてほしいなぁ。上映時間も朝一度だけでなく夜の回でもやってほしいなぁ。
東宝さんも、アニメやテレビドラマの劇場版に力入れるのはいいけど、自社の宝物再上映すればいいのに。
宣伝費かけて「七人の侍」IMAXで全国公開したら絶対ヒットするよ。劇場で映画を観る楽しさ気づいて映画人口も増えると思うけどなぁ。
サド・クロサワ
三船敏郎のドキュメンタリーで知り、前から観たかった「蜘蛛巣城」を、午前十時の映画祭にて鑑賞。すごい良かった。大満足。イントロから妖しい雰囲気で、モヤを使って過去と現代を橋渡し。ありがちな手法だけど、やはりうまい。
三船と千秋実が並んでると、三船の顔の濃さが目立つ。まるでイタリア男のようだ。その三船がギョロっと目を見開くと、なかなか鬼気迫るものがある。三船には能っぽさはないが、山田五十鈴は能っぽい。表情なく衣擦れの音とともに動く。面をつけて摺足で歩く役者のようだ。
この時代の俳優は、本当に馬の扱いがうまい(いや、シャレじゃなく)。山道を全速力なんて、今じゃありえないでしょ。三船と千秋の2騎が山中を駆け抜ける姿を、木々の間から撮るところは、黒澤のサド具合がよくわかる。あんなの何度もやらされたらキレるだろうなぁ。けっこう長い尺使ってたから、長時間騎乗してたのではないかと思われる。ほんとにご苦労さまです。
でも、黒澤のサディストぶりは、終盤の矢が頂点ですな。怖いよ〜。よくぞご無事で。昭和って濃いね。熱いね。
恥ずかしながら
初見です。テンポ悪いと感じるのは毒されてしまったのか?実際の城とか大勢の軍兵の再現って、演劇とは真逆の考え。一度なら良いが「影武者」「乱」と続けられると・・・1年後の「隠し砦」は面白かった。
人が蜘蛛の巣に掛かる…
三船敏郎さんは、黒澤映画で、善役でも悪役でも出るが、この作品は悪役の方で
出た物の秀逸。
現実の歴史に忠実であるかは不明だが、戦国時代には、こういう下剋上は多く
あったと推測できる。
多くと書くと「ネタバレ」となるので書けないが、クライマックスの「森が歩いて
やって来る」とか「人が蜘蛛の巣に掛かるような、弓矢の雨嵐」は、逸品。
心の底には何がある
楚々とした風情とそそのかし、信頼と疑心暗鬼、矛盾したものを抱え込んでいる人間の本性を山田五十鈴が具現していた。彼女の動きも静も全て計算されたもので美しく空気に緊張感が漂う。山田五十鈴でなくてはできない。歩み、暗闇からぼーっと現れるこの世のものではないような姿、無表情に見えて豊かな能面の顔に声、衣擦れの音がこれが能でないことを気づかせてくれる。
三船敏郎といい志村喬といい、立派な顎と口に日本の男の脚と足。三船敏郎の声としゃべり方はあまり好きでないが、姿と表情がこの映画では素晴らしい。最期の姿、どうやって撮影したんだろう?演出、撮影、照明、ヘアメイク、衣装全てのレベルが高い。
この映画では、本物のカラスを使っている
マクベスだから仕方ないが、先日見たA24のマクベスと効果の部分で一緒だと思った。しかも、リスペクトの範疇なのだろうが?
カラスの飛翔はこの映画では、本物を使っているが、あのマクベスはCG,
大変に汚く感じた。
舞台劇なのだから、仕方ないが、動作が大袈裟なのは仕方ないが、少しばかり気になった。
ナショナルシアターのリア王を見たが、同じ悲劇に合う、同じシェークスピア作品の王様は、怯え以外に開き直ったお道化があったような気がする。まぁ、仕方ないが。
字幕で見るべし
ストーリー:見事な武功で大殿の危機を救った2武将は出世を果たすが、それは登城中に出会った物の化の予言通りだった。
これは文句なしに面白い。ストーリーと言い、画作りと言い、迫力と威厳があって飽きさせない。
音声が不明瞭なので字幕ありの設定で鑑賞する事をお勧めします。
今週の気付いた事:手はよく洗いましょう、洗って落ちる汚れならば
蜘蛛の巣城
能の舞台を参考にしたような緊迫感のあるセリフの調子。森で遭遇する浪花千栄子の妖怪の気味悪さ。黒沢監督がこの時代の話がとても好きだということががはっきりと伝わってくる。
「戦国時代にタイムスリップしてみたい…」と思っていたに違いない。でなければこんな演出の映画は作れない。世界に誇れる素晴らしい映画だけど 最後があっけなくて物足りない…(;_;。もっとじわじわと鷲津(三船)が他の家臣に疑われ 追い込まれていくような場面を長く作っていたら もっと素晴らしい映画になっていたと思う。
1957年のクロサワがいる
50年以上前の映画。
とくに引き気味で能舞台のような映像の美しさと、その中の三船と山田五十鈴が迫真の存在のすばらしさ。
富士山のふもとにこの巨大建物をたて、霧ただよわせと雨を降らせる。構想力が圧倒的だ。こんな監督を彼以外知らない。彼は俳優に演技させない。俳優が役柄とおなじになるまでとことん追い詰める。演技など求めていない。その方法論が映画を唯一にしている。
彼の日本映画だから2020年でも生きている。
白黒映像をこれほど美しいと思うのは黒澤映画ならではだろう。幻想的で...
白黒映像をこれほど美しいと思うのは黒澤映画ならではだろう。幻想的でもあり、生臭くもあり色々な要素が見事に詰まっている。ラストシーンの迫力は圧巻。
いや〜面白い。さすがは世界の黒澤。 物の怪老婆の予言が如何に実現し...
いや〜面白い。さすがは世界の黒澤。
物の怪老婆の予言が如何に実現していくかの話。そこに見え隠れする人間の性。
山田五十鈴の怪演がお見事。三船が「俺を殺す気か」と激怒したラストシーンも迫力満点。
もう何作見たかな。黒澤明のすごさを痛感します。
白黒かつ膨大な予算を動かせるであろう黒澤組ですら、この蜘蛛巣城で理...
白黒かつ膨大な予算を動かせるであろう黒澤組ですら、この蜘蛛巣城で理想のカットを撮れたかというと、違うだろう。合戦はおとなしく、森は小ぢんまりと迫る。黒澤明は予算も時間も超過すると言われるが、正論はどちらか明白だろう。
望遠レンズを使って矢を受けるシーンを撮ったという裏話が記憶に残る
シェイクスピアの『マクベス』を基に戦国武将の物語にした作品。この頃、“能”を中心とした日本の美にこだわりを持つようになった黒澤。城内でも能が演じられているし、予言をする物の怪の雰囲気は違った意味での美が感じられる。
鷲津にしか見えない幽霊のような描き方はどことなく溝口作品をも感じてしまう。それにしても圧巻のクライマックス。次々と放たれた矢が三船敏郎を襲う。彼が「死ぬかと思った」と回顧するほど無茶苦茶なことをやっていたようだ。まぁ、このシーンがこの映画の目玉であるわけだが・・・
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